第21話 強制転居要請
「当たり前だろ!毒持ち込まれてるんだぞ?場所が割れていると思った方が良いんじゃないか?」
「そう……だな。」
「で、他に当てはある?」
「無い……」
「だろうな。ここにも居られない。イカレエルフも殺せない。なんなら、ルーロック山にも居られない……いっそ俺達と一緒に旅でもするか?」
「え……?」
「色々見て回ってさ、良さそうな場所見つけたら、そこに定住したって良いし……俺たちがこれから向かう先は、ミーヴ侯爵の城の後は、エシベ山とアフダム山だ。どっちもルーロック山のエルフには縁が無さそうだけど、どう?」
「確かに、ルーロック山とマイール山は、エルフと縁が深いが、エシベとアフダムまでなら追ってくることもなさそうだ。」
「でも、そんなところに行ったら、ルーロック山を守る事が出来なくなる。」
「そうだな……でもそれは闇落ちの代償なんじゃないのか?」
「くっ……」
「ルランの言う通りかも……」
「それに、今はそうかもしれないけど、そのうち、ルーロック山に戻ってこれる日が来るかもしれないし。」
「そんなこと……」
「おいおい、これから先どうなるかを、自分勝手に決めるなよ。何がどうなるかなんて分かんないもんだから、今余計なことを勝手に決めて可能性を潰すなって!!ただでさえ闇落ちしたせいで随分可能性が狭められてるんだから!!今決めるのは、今どうするかだけだ!」
「わ……分かったよ。」
「それに、よくわからんけど、それだけ強ければ、エシベ山やアフダム山に行っても、容易に生活拠点を築けるんじゃない?もしかしたら身元保証されて闇落ち前のように生きていけるかもな。」
俺みたいなはぐれ者が身元を保証されてこうして生きて居られるわけだし……
「そりゃそうかもしれないけどさ。」
「良く言うわッ!ほとんどない可能性を並べても仕方ないだろッ!」
「ホント!ルランの方が勝手な事を言ってるッ!」
良かれと思って言った事にダークエルフ達は思い思いに反発してくれた。
「ははは……で、どうする?俺は歓迎するよ。」
「歓迎しているように、見えないんですけど。」
タマエの一言からは、腹が決まり切らない疑念のようなものを感じた。
「ははは、ごめんごめん。今すぐには決めれないよな?とりあえず、もう一度考える時間を設けようか。」
俺としては、後になって「ルランに無理やり連れられて」とか言われるの嫌だし……自分の事は自分で考えて決めて欲しいし……
「また、外で寝て待ってるの?」
マコトは気兼ねなく言ったつもりのようだが、他のダークエルフからの視線が俺に刺さった。
「ちょ……寝ないよ。ちょっと思い出した用事を済ませようかなってね。」
「用事って何?」
「ぶっちゃけるとさ、俺とグラーシュはルーロック山に、風属性の加護を受けに来たんだよ。ミーヴに戻る前に祠にお参りを済ませたいなってさ。」
「え……?ルラン、助けたエルフと一緒に参拝する宛てが有るの?」




