第19話 機能不全?
「ルーロック山を含めて五山は、極度の神域ゆえに自治が優先されているんだよ。」
イチオが答えてくれた。
「国家の警察権は及ばない?」
「原則としてね。ただ、全く及ばないって訳じゃない。小さいけど駐在所もあるし。例えば、ルーロック山から国やミーヴへ警察活動を依頼すれば、依頼の範囲で警察による出向があって警備活動が実施されるよ。」
「ルーロック山でゴブリンが出たから集落守って!ってミーヴや王都にお願いすると警察が来て、警備活動だけするってこと?」
「エルフ舐めすぎな例えでカチンとくるけど、簡単に言うとそんな感じ。警察もエルフ達に忖度して一線を越えないかな。」
「でも、現にルーロック山のエルフの生活というか自治は、緩やかに侵食されているじゃないか!」
「実はね、掛け合ってみたんだよ……でも全然ダメ。」
「全然……?」
「そう。もう一度スノゥ達のやっている事を思い出してみて。シンプルに言えば“言葉を発しているだけ”ってのと“慈善活動をしているだけ”、それ自体で誰かが怪我をする訳でも財産を取られるわけでも、命が奪われるわけでもない……警察活動の対象としては難しいんだよね。自分で言ってて嫌になるわ……」
マコトが肩を落とした。
「んな、バカな。暴力をふるってないからお咎め無しってこと?」
「そんな感じだな。特に政治的な活動って、取り締まりが緩い傾向があるから、ダーゲン側は、それを利用して活動しているような気がする。スノゥ達がそこまで考えて活動しているか分からないけどさ。」
「もしかして、ダーゲン側の悪さをしている奴も殺そうとしてた?」
「もちろん。それも含めてやらないと、終わらないから。」
おいおい、穏やかじゃないね~。止めて正解だったかもしれんな……。
「テロリストみたいに、分かりやすい相手の方が国側も動きやすいんだよ。」
「カネ貰って政治活動しているだけじゃん、それにそんな奴等にエルフが流されなければいいだけなんだけのこと……なんだけどね」
「平和ボケしてたり、手詰まり感があったり、耳障りの良い事を聞いたり、経済活動中心という世の中で重税に追われると、流されるエルフが出てきてしまうって事かな。ここまで聞くと、闇落ちしてしまうのも無理はないような気もしてきちゃったな……」
「でしょ?」
「でも、ダークエルフにならずに怒りを行動にしているエルフも居るんだよね?」
「居るよ、政治活動には政治活動でって活動を始めたエルフ達も……でも、ダーゲンサイドにはおカネが付いているからさ……分が悪いんだよ。」
「なるほど。」
どうしたものかな。




