第18話 巧妙な負の渦
「例えばぁ、“ルーロック山の発展のため”、“ルーロック山のエルフの繁栄の為”、“みんな仲良く、外から学ぶ為”みたいなことを言うみたい。それでいて、ボランティア活動と銘打って様々な取り組みに積極的なのよ。実際にはその中で自分の主張を参加者に植え付けていく……まぁ、ぜ~んぶ工作活動なんだけどね。」
「質が悪いな……」
「でしょ?で、正面切って『私は今工作活動をしています!』って言ってないから、人の良いエルフから騙されちゃうのよ。言わなくて当然なんだけどさ。でも人の良いエルフから敵に回ってくのよ。それでもって、『スノゥは悪い人じゃない』って始まるから……もー、最悪ッ!明らかに犯罪者みたいなエルフが敵に回るなら、こっちも手加減無用なんだけどな~。話していたら、段々むしゃくしゃして来たッ!」
「マコト!落ち着けって、それでもまだ、暗殺までは……」
「「はぁ」」
ダークエルフ全員の大きな溜息の大合唱が俺の鼓膜を震わせた。
「ルランって、気が長いって言うか……平和ボケって言うか……」
「シンプルにマヌケだ!」
「そう!マヌケ!」
「しかも、重症だね。」
言葉を失ったタマエは首を横に振っている。
「ちょっと待て!俺がマヌケなのは否定しないからさ。呆れずに話を続けてよ。」
「そうだな……イカレエルフが好き放題できるのは理由がある。」
ツトムが話を戻した。
「理由?何?」
「カネだよ、カネ!」
「え……?大そうな大義名分を掲げて活動しているのに、結局はおカネなの?」
「そう……呆れちゃうだろ。ルランのマヌケなんて可愛いものかもしれない……イカレエルフは五人ともカネに困ってはいないようだけど、ダーゲンの連中がカネで釣ってくるから、利用しているようだ。そして、イカレエルフに群がったエルフにもおこぼれがあるみたいだから、エルフが集まり易くてさ。それをイカレエルフの連中も分かっていて、利用している。」
「“カネが貰えるから手伝ってください“じゃなくて、”手伝っていると不思議と礼金貰える。しかもそれはルーロック山のエルフのための活動です”って感じ?」
「そうそう。そして、『金銭的だろうとも、支配されたって大したことされないんだから大丈夫!タオミリアの支配下だってそうだったろっ』て刷り込まれるわけだ……」
「なんていうか、良心に付け込んでいる分だけ、罪深いような気がしてきたな……」
「やっとわかってきたか……」
「ってかさ、こういうルーロック山を貶めるような政治活動に対して、公的な……例えば警察とかは動かないの?」




