第17話 暗躍の地
「なんとなくね……ダーゲンの人間に扮したスパイが停滞するルーロック山の発展を願うエルフに近づいて、そのままルーロック山の弱体化工作を図っている……ということは……」
「そう、こうしている間にマイール山も狙われているという事っ!まぁ、シーデリアを狙っている国は一つじゃないし、同じ国が工作しているとしても、同じような悪さをしてくるとは限らないけどね……」
もしかすると、この前のゴブリンとオーガの襲撃の話も外部からの侵略の一端か……
やり口が過激だからダーエンからの工作とは別?に見せかけて同じ……?考え出すとキリがないな……
「そして、ルーロック山とマイール山のエルフが弱くなれば、次は、ミーヴ攻略かな。挟み撃ちは常套手段だからね~」
「だね。ミーヴを落すメリットは国が違くても共有できるから、共闘してくるかも。」
「だけどさ、それでもスノゥを暗殺する理由にはならないような……だって、スノゥもそのダーゲン工作員に騙されているって事でしょ?」
「初めはそう思っていたけど、どうやらそうじゃないんだ。」
「え?どういうこと?」
「上手く説明できないんだけど、スノゥは先の大戦で負けてシーデリアが“人の手による世界”の一部になり切れていないって自発的に思っているらしく、ダーゲンの工作員に思考を変えられているわけではないみたい。」
「は?」
「俺らとスノゥは価値観が違うから、スノゥの考えを理解できなくて……だからうまく説明できないんだけど。ルーロック山の発展にはエルフの発展が必要で、エルフの発展には、シーデリアが“人の手による世界”になり切る事も必要だって思っていて……」
スノゥはそもそも戦勝国側の価値観“人の手による世界”に染まっているのか……ルーロック山はいまだにお堅いエルフが伝統を守って生きている……それを否定して発展のために“人の手による世界”の実現を徹底するために……
「侵略を許すの?」
「いや……、シーデリア以外の国は“人の手による世界”が実現しているのだから、その国に支配されるのは“人の手による世界”の実現にすぎないって……そして何より“タオミリアに支配されても大したことはされていないから、他の国に支配されても酷い事はされない”と本気で思っているみたいだ。」
「それに、タオミリアにのみ支配されたことは、“公平”ではないって言っているみたいだし……」
「な……何を言ってるんだ?そのスノゥってのは正気なのか?」
ヤバい、俺の理解が全然追いつかない……そういうものとして一旦丸呑みするしかないのか?
「ね、ね、そうだよね!ルランだって分からないでしょ~?」
無理が顔に出ていたのをマコトは見逃してくれなかった。
「あぁ、全然分からない。そんな訳の分からないことを言っているスノゥ達に付いて行くエルフが居るの?」
「居るよ。だって、聞きたい事しか聞かないし、スノゥ側も全てを丁寧に主張している訳じゃないからね。今の話は俺たちがスノゥの言動を不審に思ってから丁寧に聞き込みして回って分かった事。」
イチオもエンジンがかかってきた。
「でもさぁ、忘れちゃいけないのは、あいつは耳障りの良い事しか言わないってこと!」
マコトが念をしてくる。
「耳障りの良い事ってどんな?」




