第15話 敗戦の見方
魔法の話になると、つい知的好奇心が注意力を阻害してしまうな。
「その戦争の直後、シーデリアはタオミリアの支配下になったんだッ!」
ツトムがムッとしながら話を戻した。
いままでろくに口を開かなかったツトムの一言が俺に刺さり、話に集中しようと決心した。
「嫌がらせやこじ付けみたいな戦後処理を潔く受け入れたことで、シーデリアは独立することが出来た。」
「仕方なかったんじゃないの……タオミリアはまだ何発か隕石を落すだけの余力が有ったって言うし、地面ごと吹き飛んだ光景を目の当たりにしてたらさ……シーデリア王の名のもとに一つにして戦っていた心が完全に折れたんだと思うな。」
ツトムのいら立ちをタマエが宥めた。
「もしかして、その時の嫌がれせのひとつで“焚書”とか行われた?」
「やられたね。生活習慣や産業が随分とタオミリアに都合よく好き勝手に弄られた。元のシーデリアを記した本は全て焚書されているし、タオミリア支配期間中に昔のシーデリアの事は人々の記憶から薄れていったから、シーデリアを取り戻すことが難しい…タオミリアは未だにシーデリアに力を及ぼして、本来のシーデリアに復興されないように暗躍してるって噂だしな……」
ご丁寧なことで……
「話はこれで終わらないのよ。それが気に入らない国が、シーデリア周辺にはあるの。」
「え?なんで?タオミリアに負けたんでしょ?」
「おいおい、ルランも俺たちのことが言えんくらい短絡的だぞ!」
「ちょっと!喧嘩になるでしょーッ!!」
マコトまでツトムを抑えにかかり、タマエが変わって話を続けた。
「先の大戦はね、シーデリアから見ればタオミリアの侵攻に対する防衛戦だけど、世界的に見れば、シーデリアとタオミリアが戦ったってだけの話じゃないの……」
「ごめん、その辺が俺よくわからないんだよ。どんな戦いだったの?」
「はぁ、マジで話が進まないな。」
シロウがへきへきして立ち上がって辺りをうろつき始めた。
「仕方ないだろ、俺だって王立図書館とか、都立図書館とか言って調べたりしたけど、本は無いし、ミーヴ侯爵からちょこっと話を聞けたくらいなんだよ。でも誤解やあやふやな知識で、お前たちの今後の話に加われないじゃん。」
「分かったよ。とりあえず、関係する範囲で話すから。それでいいよな?」
ツトムの返事に、シロウはため息を一つして座り直した。
「良いよ。悪いね。」




