第14話 出身者と住民のイドウ
「入ってきている人間たちは、ミーヴ出身者とは違うんだよ。」
「分かってるよ。ダーゲン出身者なんでしょ?」
「ダーゲン出身者じゃないんだよ。ダーゲンの人間だけど……」
「ややこしいな。どういう事?」
「先の大戦でミーヴが消滅したのは知ってるよね?」
「何となく……ちょっと待った、そこまで遡るの?その話って百五十年位前の話でしょ?」
「はぁ……ルランって、何処出身?絶対にレーゼンでしょ!?」
「ちが……え?何でそう思ったの?」
「その平和ボケっぷりは、レーゼン出身者特有だよ。あそこは先の大戦で戦場になってないからさ。無理もないって言う人は居るけど。」
「そうそう、シーデリアの西側では今でも最前線のミーヴと近隣の島は酷いモンだったって話が生々しく語り継がれているのに、極東のレーゼンなんて……」
そうなんだ……
俺は、レーゼン出身者じゃないけど知識不足が結果的にノンデリっぽくなって心苦しくなった。
「ごめん……話を戻させてくれ。ミーヴ消滅って話は知ってる。隕石魔法だかを使われたとか……」
「すんっごい、雑ッ!レーゼンでは歴史をその程度にしか学ばないの?」
ヤバい、俺が口を開ける度にレーゼンが落ちていく……
「おいおい、止めろって、今じゃミーヴ出身者だってその程度の認識だぞ。中には謎の隕石落下がたまたまミーヴに落ちたって思ってる奴もいるくらいだ。」
「えーっ!そうなの?」
「人の一生は短いし……特に優遇措置の無い下界の人間たちは、働き詰めだから、歴史の勉強する時間も無いんじゃないか?」
またダークエルフ同士で話が始まってしまった。
余程自分たちだけでの話し合いが盛り上がらなかったんだな。
敢えて気にしていないようにしているがひそひそ話もしてるし……
「ごめんごめん、そのミーヴ消滅とルーロック山がどう関連するの?」
「ミーヴ消滅の隕石を落したのは、西の果ての国タオミリア。タオミリアの連中が使った魔法なんだよ。衝突の被害を最小限に抑えるために、ルーロック山のエルフとマイール山のエルフ、避難していた人間たち全員で対国防御魔法を使ったんだ。」
「対国防御魔法?」
「名前は無いよ、とにかく緊急事態だったからね。後にも先にもあの一回にしか使われなかったし……」
「全員で使ったっていえないよ!ほとんどの者は只言われるがままにマナを供給して居ただけなんだから。」
マコトの説明をイチオが補足した。
「とにかく、ルーロック山の風属性の力と、マイール山の水属性の力を練り上げて、光の障壁を作ったの。」
タマエが話を戻してくれた。
“風と水の練り上げ”で、“光”の壁を作った……
「ん-、雷かな~、名前を付けるとしたら……ライトニングウォールとか?」
「ルラン……変に察しが良いね。」
「でも、全て光の壁で守りきれたの?」
「ん-、光の壁を青魔法と緑魔法で補助しながらって話だったと思う」
「えー?隕石衝突のエネルギーを水で守ったら、それこそ水蒸気爆発起きそうだけど……」
「それは全部風魔法で爆風を生み上空へ跳ね上げたんだよ。その風の壁があったから光の壁が形を保てたとかって話だったような……」
「それ……凄まじい光景だったんだろうね。」
「ね。でも詳しい資料が残ってないんだよ。」
「え……そうなの?気になるな~。」
「ルランっ!魔法の話はいいんだよ!!」
「あ、ごめん。」
何の話だったっけ?




