第11話 ダークエルフ達の悶々
アジト奥の少し開けた空間で留守番のダークエルフ達は車座になっていた。
「良い子にしてたかーっ?」
俺の呼びかけに四人のダークエルフが一気に鋭い眼光を俺に向けて飛ばしてきた。
「冗談、冗談だよ」
予想以上のプレッシャーに慌てて両手を上げて降参の意を示した。
なんで心労を極めている俺が帰宅時の軽い冗談に強烈な反発を受けなければならないんだ。
勘弁してくれよ。
「首尾はどうだったの?」
いち早く冷静を取り戻したイチオが空気を換えてくれた。
「どうもこうも、ランコ以外はきちんと家族の下に帰してきたよ。」
空気を汚した俺に変わってマコトが答えた。
「そっか、ランコは独り者だったもんな……で、どうしたの?」
「どうしたもこうしたも、まだ俺が丁重に保管してるよ。」
マコトの目配せでバトンを受け取り俺が答えた。
「どーするつもり?」
「それはだな……」
「祠の近くに埋めるっぽいよ」
口ごもる俺を見てすかさずマコトが答えた。
「「えーー!?」」
今度は驚きで見開かれた強烈な視線を集中的に浴びせられた。
「いやいや、別にいいでしょ?祠周辺は誰かの土地で、所有者がうるさいとかあるの?」
「無いよ。基本的に、ルーロック山は私有も国有も無い“神域”だからね。無いけどさ……」
「じゃ、いいじゃん。」
「良くないでしょッ!!」
「良いよ!そんなことより、今後どうするかでしょ?」
「勿論、今後どうするかも大切だけど……何で良いんだよ……」
「はぁ……今後どうするかの話しないなら、俺、ランコの埋葬行くよ。」
「ちょ、ちょっと待ってよっ」
「何だよ。こっちも暇じゃないの!」
「分かったよ。」
「どうするか……」
「どうするも何も、アイツを殺るしかないでしょ!」
「殺るしかないって、短絡的だなぁ。」
聞き捨てならない物騒な発言に、俺は踏みとどまって欲しいと思いつつもライトに割り込んでみた。
しかし、ダークエルフたちの会話は止まらなかった。
「そうだよ、十人から五人になったんだよ。作戦の立て直ししないと。」
ちょ、無視したなー!!
「ちょっと待て!!そうじゃないだろ!?殺す以外ないのかって!!!」
「あーん、ルラン、あんな奴、早く殺した方がエルフの為なんだよ!!」
こいつら……まだ分かってないのか!
「待てーッ!!何度言わせんだよ!もう少し先を見ろって!!」
「あーン?おい、ルランっ!喧嘩売ってるんのか、てめぇ!?」
「売ってないわッ!!標的が誰か知らねぇけど、エルフなんだろ?そのエルフを殺せば、どこかで闇落ちするやつ出てくるんじゃねーのか!?」
「そ、それは……」
「つまり、お前たちのやろうとしている事は、エルフの為であると言いつつ、同時にエルフを貶めるんだよ!!」
「でも……他に方法が無い。」
「それじゃ何か?標的を殺した後に闇落ちするダークエルフも全部殺すのか?」
ダークエルフ達は口を紡ぎ俯いてしまったが、俺は抑えきれなかった。
「闇落ちすると強力になるんだって!?今はお前らがエルフと対峙するだけだから優位だけど、これから生まれるダークエルフよりお前たちが強い保証はないよね!?もし仮に、おまえたちが返り討ちに遭ったら、お前たちの家族が闇落ちするかもしれないよね。いいの、それで?」
ここまで言って分からなきゃ、救いようが無いな。
黙っているだけじゃ何を考えているか分からんし、ちょっと小突いてみるか。
「さて……俺は言いたいことを言ったし、それじゃ、お前たちの言う“標的の殺し方”を考えようか?俺も考えるの手伝うよ。」




