第44話 スキルアップへの挑戦 その2
改訂2023/04/14
おじいさんの言っていた通り、だいたい10分位だろう。
さて、これで、俺の補充も済んだという事かな。
ここで、改めて、現状の再確認だ!
散布している偵察粒子に意識を向けた。
ラッキーッ!
周辺3km四方に、人は居ない!
まだまだ実験できるぞ!!
「龐徳、ちょっと手伝って!」
「御意」
「お手伝いの前に、ちょっと確認をします。その石を拾って……あの木に向かって投げてみて!」
俺は握りこぶし大の石を指さし、続いて30m位離れた木を示した。
「御意!」
力強く頷いた龐徳は、速やかに投石ッ!
ブンッと腕を振る音に、シューーっと空気を割く音が続く。
そして……
バーーーーンッ!!
破裂音と共に着弾。
弓も上手なだけはあって、こういうの、やっぱり上手ね……
俺の関心を他所に、ミシミシと音を立てて、木が倒れた。
「はぁ?」
開いた口が塞がらなかった。
完全に人間離れしてますね。
でも……豪傑、猛将って、こういうことだよね。
「はは、あはは。さすがは、龐徳!俺も守られ甲斐があるってもんだ。」
「いいえ、自分でも驚いています。」
やっぱ、そうだよね。
でも…どういうこと…?
気になるけど、俺が考えても分からないから、おじいさんに聞くべ、保留、保留。
とにかくだ、これを俺に向けて投げてもらえば、間違いなく「脅威」だわ。
頭に直撃したら、頭蓋骨は木っ端みじんだし、腹に受けたら貫通するんじゃないか……?
まったく気乗りがしないが……やるか……
「龐徳さぁ、ちょっと離れたところから、合図の後に俺に向けて投げてくれる?今の感じでいいから。」
「……御意」
龐徳もちょっと引いてるますやん。
先生を信じて試してみますか……
でも…怖いなぁ…
怖すぎるな……
絶叫マシンは、安全ベルトなどで安全性が確保されているから乗れるんであって…これは完全に安全ベルト無の……
言わば、ヒモ無しバンジージャンプ(クッションも無し)だもんな~。
いやぁ、他の方法無いかな~……
やいのやいの考えても妙案は浮かばず、代りに先生の不敵な笑みが、思考の真ん中に、どデカく浮かんだ。
はぁ、やるか……俺がスキルを試しているようで、試されているのは俺か……
トボトボと歩いて龐徳と距離を取った。
「合図はっ……どのような合図で、投げたら、良いでしょうかーっ?」
離れた龐徳の質問は、大きな声だったが、俺への心配が滲み出ていた。
「俺が左手をぉ!龐徳に向けて出したらぁ!その左手に向けてぇ!投げてぇ!」
俺も心配を振り払いたくて、大きな声を振り絞ってゆっくり伝えた。
「御意!」
龐徳の力強い返事に釣られて、さっきの倒れる木の姿が脳裏に浮かんだ……
マジでやりたくない!
けど、やるしかないっ!!
目指せ【黒き理】☆1!
龐徳を見ると、その右手にある拾った石を見ずに、収まりの良い握りを探り……力強く握った。
準備万端か……
良し!
行くぞ!
俺が左手を出すと、龐徳は振りかぶった。
30mも離れているのに、すぐそばに感じるほど、大きく見えた。
そして、モーションに入る龐徳
その丸太のように太い右腕に青筋が立つ。
こういう映像まで、辺りに巡らせている偵察粒子が惜しまず送ってくるとか……
マジで…親切設計…ってか、心折設計された偵察粒子だこと!!
って、ツッコミをしてる場合じゃない――っ!
――――っ!!
声を上げたつもりが、吸っていて声になっていない。
きっと霹靂車を向けられた人々は、こんな気持ちだったんだろうな……
じゃない!!
落ち着け!
この左手をめがけて飛んでくるんだ!
絶対っ、大丈夫!!
先生を信じろ!
俺!!
気持ちを強く持て!!
そう言い聞かせたその時、龐徳の腕が弾けるように加速して……
ブンッ!
石が放たれたっ!
龐徳―――っ!
マジで躊躇なく、投げてくるじゃん―――っ!
ホンット、命令に忠実だことぉぉぉっ!!