第8話 鬱仕事最終日スタート
「おはようございます、ルラン様」
「お、おはよー」
あれ……!?
俺起きちゃったじゃん。
賢者の石以外に教えてもらいたいことがあったような気がしたのに……
なんだっけ……
あーっ!
おじいさんに久しぶりに聞きたいことがあったんだったーーーっ!
はぁ……マコトに案内までさせて俺の我儘を聞いてもらっているから、流石に二度寝は出来ないなぁ……
仕方ない……今夜かな。
「ルラン!ボーっとしてないで、サッサと食事済ませて、ショウゾウとジロウの帰しに行こーッ!」
マコトの一言の御陰で吹っ切れた。
「そうだね。気持ちを切り替えて、今日も一日頑張ろう!」
マコトに案内されるままたどり着いた最後の家は、エルフの集落で見かけた事の無い豪邸だった。
「マコト……本当にここで合ってる?」
「間違いなく、ここだよ。むしろ間違えようが無い!」
「そうか。」
「じゃ、また集落の外で待ってるね。」
「そう……だね。その方が良さそうだね。」
何が待っているか分からないけど、頼むぞ、身元保証書!
意を決して腹に力を入れて朝らしく爽やかに……
「おはようございまーすっ!ごめんくださーいっ!!」
「はーい……」
返事とともに出てきたのは……人間!?
マナを感じ取れない俺には、今まで会ったエルフの容姿、特に耳の形位しか判断のしようがないんだけど、エルフではない。
むしろ普通の特徴にバッチリ合うけど……
「え?あれ、ここエルフの家ですよね。」
「そうですよ。」
「でも、え?」
「あ、私は、ここで……まぁ、魔法とかいろいろ教えてもらっている者です。」
「そうなんですか……」
俺もエルフに教えて貰おうとしたんだから、まぁ同じことを考える人は居るよな。
「そんなことより、どのようなご用件でしょうか?」
「あ、すいません。私はこういう者なのですが……」
「わ!!え!?聞いた事はあったけど、実物初めて見ました!」
「そうですか……で、この家の方はいらっしゃいますか?」
「はい、少々お待ちください。」
そう言うと、家の中に戻って呼びに行ってくれた。
ルーロック山のエルフの家で住み込みの修行?バイト?ってことはミーヴの人なのかな。
俺も住み込みとかしたら、魔法やマナが身近になって分かるようになるかも?
いや、魔法が上手なグラーシュと居ても全然ダメだから、エルフの家に住み込んでもダメかもしれないな。
「お待たせしました。」
穏やかな声と共に姿を現したのは、質素な格好のエルフだった。
しかし、その纏う洋服の素材や色合いが調和して洗練された上品さに、俺は一瞬で圧倒されてしまった。
「あ、朝早くすいません。」
「私に何か御用ですか。」
「山中でダークエルフの遺体が複数見つかり、身元の確認をしていたところ、こちらのショウゾウ君とジロウ君に似ていると聞いたもので、念のために確認して頂きたいのですが、宜しいでしょうか。」
「ふぅ……お入りください。」
深いため息が俺の胸元に冷気となって当たったような気がした。
広がる緊張を抑えられないまま静かに入出した。




