第6話 見た目だけじゃない
「あれ?先生は?」
眠りにつくと共に立つ“いつもの白と黒の空間”に先生の姿が見当たらなかった。
「向こうじゃ。はぁ、困ったもんじゃ。」
おじいさんの指差した先を凝らして見ると座り込んでいる先生の姿があった。
「全然黒い方から出てこようとせん。お前さんのせいじゃ。」
「ちょ……会って早々なんスか。私のせい?身に覚えが全く御座いませんが……」
「まぁ……とりあえず、見に行ってきた方が早いじゃろ。」
おじいさんに促されるまま先生の所に行った。
先生はうずくまっている。
正面に回り込んで見ると、何かを触ってニヤニヤしているのが分かった。
手元を覗き込むと、真紅に輝く宝石のようなものを夢中になって捏ね繰り回して、甚く御満悦の様子だ。
ルビー……、ガーネット……?
光物が大好きな先生のことだから、ルビーかな。
って、あれ?ルビーなんて吸収したっけ……?
「先生、それルビーですか?」
「わーっ!!ビックリしたぁ。驚かさないでよっ!!」
「あ、お楽しみのところをすいません。何ですか、その手に持っているの?」
「あぁ、これ?いいでしょ~。」
「いいってか……ルビーですか?」
「ふん、ルビーな訳無いでしょ!違うわよ。」
「何ですか?」
「マナの結晶よ。」
「マナの結晶ですか……マナの結晶……どっかで聞いたような……は!?賢者の石!?なんで?それは実在しないって話じゃ……ってかなんで先生持ってるの?」
「あなたがバカみたいな火の玉を吸収したでしょ。それも二発も。」
「あーーーっ!!」
「それを使って作ってみたのよぉ~。良くできているでしょ~?」
「いやいや、はぁ?初めて見るから良くできているかなんて知らないし……ってか、そんなことも出来るんですか?」
「は?あなた、何を言ってるの?私にできない事なんて無いわ!」
いや、有るでしょ。さすがに無いってことは無いでしょ。ノリで言っただけですよね?……ってツッコミ入れるとややこしくなるから……
「あ、すいません。エルフのマコトから魔法学校でも見た事も聞いた事も無いって言われたから、賢者の石って架空のものだと思って、スパッと記憶の片隅の奥の奥に仕舞い込んで……」
「バカね、架空のものじゃないわよ。現に今ここにあるじゃない。」
「そうですね。マナの実感が俺には無いから、魔法を吸収しても、上手く把握することが出来なくて、“吸収したマナはどこに行ったのかな~”って思ってたんですよね~。先生が隠し持ってたんですね。」




