第5話 防御は最大の防御?
「防御魔法ってさ、防御だけじゃん?」
「そりゃそうだけど……ん?ごめん、何が言いたいの?」
「はぁ……守っていても危機は続くよねってことッ!!」
「あ!そっちか……」
「そっちかじゃないでしょ!そっちが1番重要でしょ!守って凌いでたって攻撃は止まないの!!相手の攻撃手段を叩き潰さないとでしょ!!今回は私たちのマナ切れになったから二発で済んだけど、用意周到な戦いならそうはいかないよ!!」
「まぁまぁ、落ち着いて。ご指摘ありがとうね。俺もその点は考えていて、守っていても危機は続くって分かっているよ。けどね、そっちは手を打ってあるから今は良しとしてさ。とりあえず防御魔法!」
俺は足りない説得力を補うために、目を見開きずいっとマコトに顔を寄せてみた。
「ちょ、近い近い。分かったから!先に言っておくけど、他の防御魔法って言ったって、あの魔法は防げないよ。」
「まぁ、そうかもしれないね。防ぐとか相殺するとか……何にせよ衝突を機に大爆発しそうだし……」
「そう!それに、どっかの誰かさんみたいに“吸収”なんてする奴はほとんど居ないかな。吸収した先が大惨事になるからね。シンプルで圧倒的火力!!最強の魔法だね。」
ははは、そうですよね。
「それなのに……一発目を腰抜かしながら吸収して、立て直しての二発目は平然と吸収するとか……一発目のアレは演戯だったの?だとしたらルランは、冒険者止めてマジックアクション系の俳優になった方が良いよ。あの場面であの迫真の演技……頭がおかしくなってくるくらい凄かった。」
演戯じゃなくて、ガチもガチ。セメントです。
「大切な転送先が2つも消滅して、その周囲にも相当な被害が出ている筈なのに、今も全く意に介していないんでしょ?何にも言ってこないもんね。『俺の転送先ぶっ壊しやがってぇぇ!!只じゃおかねぇぞぉぉ!!』って凄んでも不思議じゃないのに……」
「まぁ、その辺はね。アレがアレでさ、たまたま運よく上手くいったって事で。俺は日頃の行いが良いからさ。今だってこうして遺体を家族の下に無償で返している……こういうのが土壇場でビシーッと効いて来るんだよね~」
「何それ…意味わかんない。」
ん-、魔法のスペシャリストから謎の正論パンチを受けただけで、防御魔法についてのお得情報は聞き出せなかったなぁ。
それでも頭の中でモヤモヤしていたことは少し晴れたし、気分転換もできたし、良しとするか。
とりあえず、フォグパレスと同じような強そうな防御魔法を見つけたら、どんどん手を付けてみるしかないかもしれないな~。
四属性分の防御魔法をグラーシュが修得すれば、運よく何かしらのミラクルが起きるかもしれない……
いや、グラーシュに限っては運ではなく努力で切り開きそうだな。
空の俺にできることは、割り切ってそこに一点賭けで投資するだけだ。
しっかり休んで、明日の仕事に備えよう。




