第1話 誰のための墓地?
村長が支度のために奥へ行った隙に、遺体にローブを被せて収納し、外に出た。
「ごめん、これから村長さんが墓地に案内してくれることなったよ。グラーシュとマコトはちょっと集落の外で待ってて。」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。終わったら合流する。」
「ルラン、合流するって、私達がどこにいるか分かるの?」
「多分、大丈夫。村長来るから……早く、行って。」
「はい。」
「え…?大丈夫…?なんで大丈夫なの?」
騒ぐマコトを尻目にグラーシュがマコトの乗る馬の手綱を引いて集落の出口に向かって行った。
程無く玄関から墓地への案内の支度を済ませた村長が出てきた。
「お待たせしました。」
「いやー、突然のことですいませんね。」
「大丈夫ですよ。」
「墓地まで、距離有りますかね?」
「そう……ですね。」
「それなら、私の馬に乗っちゃってください。」
村長は恐る恐る近づき見上げて言った。
「これ馬ですよね?」
「馬です、デカすぎですよね~。でも、デカいから、村長さんが乗っても余裕ですよ。」
「は……はぁ」
先に乗って、村長を引き上げた。
「ひぃぃぃ……」
村長が吐息交じりの悲鳴を上げた。
俺は慣れたけど、普通の馬より目線が高いから、乗馬に慣れている方が抵抗あるかもな……
「落ち着くまで待ちますので、良ければ仰ってくださいね。」
「大丈夫です。ルランさんもお忙しい事と思いますし、行きましょう!」
語気の強さから意を決したように思えた。
「では、お願いします。」
村長の案内に従って到着した墓地には、大小さまざまな墓石が並んでいる簡素なお墓が並んでいた。
「ランコを埋葬する場所は、どのあたりになります?」
「そうですね……向こうの外れ辺りでお願いします。」
ダークエルフを墓地の目立つ場所に埋葬する訳にはいかないってことか……
死んでもなお闇落ち扱いのままか……墓地利用者というか生きているエルフに配慮すると仕方ない事なのだろうけど、なんだか切ないな。
「分かりました。この辺りですね。」
「そうです。」
「了解です!」
「え……?」
「何か……?」
「ルランさん、今から埋葬するんじゃないんですか?」
「いえ、また日を改めてこちらに伺い、埋葬します。これから埋葬までお付き合いいただくと村長さんのお時間を随分頂いてしまうことになりますし……」
「そんなこと気にしないでください。私は大丈夫ですよ。」
「それに、所用がございますので。」
「そうですか……それならば仕方ないですね。」
「申し訳ないです。ご案内頂き有難うございました。家まで送らせていただきますね。」
「はい。よろしくお願いします。」




