第36話 可能性は零じゃない
「こ…こんな人に…私たちは負けたの……?」
マコトの深い溜息のような吐露が俺の胸を力強く締め付けた。
「ごめんね。」
なんだか申し訳なくなって、俺は力無く謝った。
「謝らないでよ。余計に悲しくなるから……」
「いや、お遊びレベルの魔法とは言えせっかく教えてくれてるのに、修得できないことに対してだよ。」
「あ……そっちか。それは気にしないでいいよ。一人に教えるのも二人に教えるのも大差ないから。」
「で、俺のことは置いといて、マコトの見立てでグラーシュは筋が良いの?」
「メチャクチャいいッ!マジでどっかの誰かさんと大違い!」
おいおい、話を変えているのに、しれっと引っ張り出すな!
「そうだよね~、グラーシュは筋が良い!それに、これでグラーシュは四属性になった訳だし!」
「え……?そうなん!?グラーシュ凄い!!」
「そんな……まだまだ全然ですよ。」
グラーシュは、まだ自分は魔法使いじゃなくて格闘家や武闘家ってイメージなんだろうな~。
そんな思いとは裏腹に、水属性が加護で、火・風・土が属性有りの四属性持ちって感じか。
残すは光と闇だけど……光属性と闇属性の加護ってなんか嫌な予感がするんだよな~。
先に、火・風・土の加護かな。
「いーなー四属性。私の知る限り、四属性持ちって、シロウくらいかな~」
そうなんだ……だからあんな横柄というかリーダーっぽい雰囲気出していたんだな~。
「そしたら、シロウが一番強いの?」
「ん-、そうかもしれないけど……どうかな~。」
「え?」
「だって、強さって、戦い方次第じゃん?」
「あはは、そりゃそうだ。毒を盛られたらなぁ。」
「うん……」
あ、やばっ、余計な一言を言ってしまった……
「あ、いや、例えばって話よ。」
「うん……」
フォローになってないね。
ごめんなさい……いや、いっそのことこのまま気になっている事を聞いちゃえ。
「気になることがあってさ……毒耐性とかって無いの?」
「まぁ、あるにはあるよ。でも……」
「ん?」
「“毒耐性”っていうオールマイティなのは、私は聞いた事が無いかな。」
「どういうこと?」
「例えば、風属性を持っていれば、風に関する耐性も付くからさ。風属性由来の毒には強くなるって事。」
「なるほど。全属性を持てば全属性の毒に強くなるとか……?」
「まぁ、そうだけど……別にマナ由来じゃない毒だってあるからね。言うなれば無属性の毒……」
「え?その無属性の毒が相手なら体力勝負になるの?」
「真っ正面から何の準備も無ければそうなるけど、例えば無属性の毒でも弱毒から体を慣らしていくとかすれば、耐性が付くかもね。」
弱毒から体を慣らす……なんともまぁマゾい修行だな……
「要するに、オールマイティな“毒耐性”を得るなら……マナ由来かどうかに関わらず毒を浴びまくって生還するとかが良いかも。そんな馬鹿な訓練をしている奴聞いた事無いけど、上手くすると全属性の修得もそれでいけるかも……」
ん?
俺の属性習得の可能性はまだ残っているってことか?
全ての属性の攻撃魔法を修得した後、グラーシュにお願いして属性攻撃を喰らいまくるとか?
美人耐性皆無の俺が、露出多めの長身グラマー美人からありとあらゆる攻撃を受ける……
おじさんだってのに、何か新しい自分に目覚めそうだ。




