第32話 引渡の覚悟
「ちょっと待ってくれ!マコトとルランの戻ってくるまで、俺達はただ待機しているだけか?」
シロウの口をついて出てきた投げっぱなしの言葉にイラっと来たが……まぁ、さっきよりも積極性が増しているとみるべきかな。
「そうだよ。まぁ、こっち様子が気になったらアルディかエレナから聞いて。」
「え……?」
「アレがアレでさ。アルディとエレナには、必要に応じて、こちらの状況を思念で伝えておくから。」
「アレが……アレ?」
「要するに、任せとけって事よ。」
「な……大丈夫なのか?」
「おいおい、さっき身元保証書見ただろ?」
「そりゃ、見たけどさ……」
「まぁ、待っているだけってのも詰まらないだろうから、以後は変な物を食べないで済むように、自分で食糧を調達して食事をとれるようにしなさい。」
ストークにグラーシュとマコトが乗り、ラムーに俺とコウゾウさんが乗って、出発した。
最初に寄るのはもちろん、コウゾウさんの家だ。
しばらく走ると、集落が見えてきた。
「コウゾウさん、ここでいいですか?この後、用事も有りますので。」
吉報を持ち帰るのだから、別に俺が家まで寄り添う必要も無いだろう。
「分かりました。お付き合い頂き、ありがとうございました。」
「どういたしまして。」
「お気をつけて……それと、イチオを宜しくお願いします。」
「はい。最善を尽くします。」
ラムーから降りたコウゾウさんは、自宅に走っていった。
その足取りはどことなく、軽く見えた。
息子は生きていたわけだし、ルラン一行にも安心して任せてくれたって事なんだろう。
頑張るぞー!
「さて、マコト、ここから遺体を帰していくわけだけど、遺族は全員、我が子がダークエルフになってしまったことを知っているんだよね?」
「多分……」
「え?…多分って、知らない人もいるかもしれないの?」
「そりゃそうでしょ。実家暮らしで闇落ちしたら知ってるだろうけど……それに、闇落ちは誉じゃないから、隠しすし、隠れるかも。」
そうか…まぁ、そうだよな…
だとしたら、自分の子供がダークエルフの遺体になっていきなり帰って来たら、発狂するんじゃないか。
せめて、ダークエルフになってしまったことは、把握して消化していて欲しいんだけどなぁ……
ここまで来たら、“当たって砕けろ”しかない!!
砕けちゃダメか。
「近い所から案内してもらえるかな。」
「はい。まずは、マキコです。」




