第31話 身元引渡の準備
「遺体は俺が回収する。マコトの案内先で指定された遺体を取り出して、遺族に帰す。」
「分かりました。」
黙り込んでしまったシロウに代わって俺の提案にイチオが返事をした。
「だから、先にどの遺体が誰なのかを把握する必要があるから教えてくれるか。」
「左から、ショウゾウ、ジロウ、ヒトシ、ランコ、マキコです。」
「了解。」
魔法に長けているだけじゃなくて、魔法学校にまで通ったエルフの前で豪快にゲートに収める訳にはいかない。
俺は来ていたローブを脱ぎ、亡くなったダークエルフに順に被せてから、ローブの下でゲートに収めた。
続いてゲート内で、ラゴイルの体と同様に瞬間冷凍し、保管した。
「これで、あとは向かうだけだな。」
「分かった。」
眼に力が戻りつつあるシロウが発した返事に合わせて、ダークエルフ全員が動き出した。
「ちょっと待て!!さっきも言っただろ!全員でなんて行かないぞ!マコトだけだ!」
「しかし‥…」
「『しかし、』じゃないわっ!残りの四人はここで待機!!」
「なんで!?」
「その方が、守り易いんだよ!」
「守り易い?」
「お前たちは、当分戦っちゃいけない。ガス欠……じゃない、マナ欠だろ?」
「その点は問題ない」
シロウが胸を張って言ったが、足元が少し揺れているように見えた。
「さては、またマナポーションだの強化剤だの使うつもりか?さっきも言っただろ、ちょっと先のことを考えろって!」
「う……」
「それに、お前たちの影響で、どんな風に闇落ちの連鎖が始まるか分かったもんじゃないからな。今は、ってか、俺たちが戻るまでは、良い子に待機だ!」
「ちっ……わかった……マコトを頼む。」
「りょーかい。」
「ルラン様?」
「あ、ごめん。今回はグラーシュに付いてきてもらっていいかな?」
「はい!」
「さて、マコト、早速だけど、出入口は一か所だけだよね?」
「うん。一か所だけ。」
マコトは、他の四人と違い既にかなり胸襟を開いてくれているようだ。
「アルディとエレナはアジト入口で待機……ってか、護衛ね。悪いけど、早速取り掛かってくれるかな。」
「「御意」」
「コウゾウさん、そういう訳で、イチオ君には、一旦この場で身を隠して貰います。」
「大丈夫です。私は帰って妻に伝えて……」
「そうですね。それとなく、いつも通りの生活を送っていてくださいね。」
「分かりました。」
「いいよね、イチオ!」
「はい、大丈夫です。」




