第29話 捻くと拗らせと暴発する苛立ち
「イチオです」
「シロウ……」
「ツトムです」
「タマエです」
「マコトぉーっ」
男子3人、女子2人か。
シロウ、鼻に付くな……別にいいんだけど。闇落ちするくらいだから鼻に付いて当然か。むしろマコトの明るさが闇落ちを感じさせない事に違和感を覚えるべきなのか……
「で、5人が毒殺されたよね?」
「――!?なんでそれをっ!!」
「いいんだよ!アレがアレだから。本題はそこじゃないから、とりあえず、それはそれとして、亡くなった5人はどうする?」
「それは……」
5人とも顔を見合わせながら口籠ってしまった。
「いや、いや、返そうよ!親元に!!」
「でも……」
「わかった、そしたら、俺たちが帰すから協力して!」
「は……?マジ?」
「マジもマジ!大マジ!!おまえら、自分勝手すぎ!コウゾウさんがどんな思いでここに安否確認に来たか、ちょっとは想像しろ!」
「……」
「頭に血が上って、会った早々にいきなりぶっ放してくることをコウゾウさんが想像していたかは知らないけど、気が立っているダークエルフが相手でも、息子の安否確認に来たんだぞ!」
「はい……」
「俺も自分勝手な方だけど、同じエルフ相手に……特にイチオ!怒りで自分の親父も分からなくなるのは無しだ!そうでなくても、一部のエルフから食料とかを有難く頂いてきたんだろ?軽率すぎ!!マジでお前ら酷いぞ!」
「……分かりました。」
「いーや、分かってない!なんか、俺、あったま来た!最後まで言わせてもらうからな!!」
「イチオ!もし万が一自分の親父を殺してたら、自分の心、ぶっ壊れてたんだぞ。そんでもって、お前らはその加担者になってたわけだ!有り得んだろ!そんなんだから闇落ちなんてするんだ!バカたれー!」
五人の沈黙から反省が滲み出ているように感じた。
ふーっ、ちょっとはすっきりした。
「話を戻すぞ。親元への帰し方は、俺が遺体の保存と管理するから、5人の親元の分かる人が居るなら、引率お願い。」
「私……分かります。」
さっきの素っ頓狂な自己紹介から一変して神妙な面持ちでマコトが手を上げてくれた。
「良し、じゃあ。マコトに案内を頼むね。」
「ちょっと待て!そんなことを言って、マコトを殺……」
「殺さんわーーっ!殺したら、遺体を帰せんだろーーっ!!」
「遺体を帰した後に、殺……」
「殺さんわーーっ!殺したら闇落ちの連鎖が止まねぇんだろっ!?」
いかいかん、また頭に血が……平常心、平常心。
「いいか?俺が分かっている情報で、対処しなければならない問題は3つだ。」
「1つ目は、ダークエルフの遺体。これは親元に帰す。」
「……」
「2つ目は、今回の闇落ちの余波をこの5人で留める。」
「……」
「3つ目は、この5人のダークエルフの今後を共に考える。」
「……」
「協力してくれるか?」
4人が頷いてくれたが、シロウだけが納得いかない様子だ。
「何か引っかかる事でもある?」
「どうして……そこまでするんだ?」
「あん?」
「いや……」
「ルランさんは、ミーヴ侯爵の……」
耐え兼ねたコウゾウさんが口を開いた。
コウゾウさんは何も悪くないし……
「お友達だ!ほれ」
俺が身元保証書を見せても、シロウはまだ怪訝そうな顔のままだ。
間が空いてしまってすいません。




