第28話 ダークエルフとの和解
うーん、目を覚ましたダークエルフから俺がどんな話を聞いたとしても、彼らの怒りが収まる訳じゃないし……どうしたらいいのやら……
「ん……」
俺の考えが纏まらないうちに、小さく唸りながらダークエルフの1人が目を覚ました。
「あんた、何者なんだ……?」
力が上手く入らないのか、上体を起こせず寝たまま顔をこちらに向けて、話しかけてきた。
「ルランです。ほら、これ」
俺は、天下御免のミーヴ侯爵様発行の身元保証書を自慢げに見せた。
「ふんッ……ミーヴの犬か……」
こ、この野郎ッ!
聞く耳も持たずに仕掛けて来ておいて、好き放題言ってくれるじゃないの!
「バカたれっ!どちらかと言えば、ミーヴが犬だ!!」
「ちょっと!!ルラン様っ!!」
グラーシュの鬼気迫る声に、俺は我に返れた。
「冗談だよ、冗談に決まってるじゃん。」
「こ……こんな奴に負けたのか。」
俺のグラーシュへの言い訳に、一言多いダークエルフ。
「そうだ、こんな奴に負けたんだから、観念して、ちょっと質問に答えてくれ。」
癪に触ってついマウントを取ってしまった。
「はぁ……分かった」
「そしたら、何から聞こうかな~……」
「ちょっと待ってくれ、せめて全員が目を覚ましてからにしてくれ」
「あ……まぁ、それもそうだね。そうするよ。」
グループで活動をしているとコンセンサスをきちんと取ることとか、凄い大切だもんね。
あとから1人ずつ調整するのが大変だよね。
俺も、社内調整で苦労をしたことあるから、よくわかるよ。
それに巻き込まれても面倒くさいし……
「あ……ありがとう」
「どういたいまして」
しばらくすると、全員起き、晴れて会談となった。
まずは、いきなり攻撃してきたことを詫びて貰おうか……とかって言うのは俺の性分に合わないし、端的に質問に入るかな。
その前に忘れちゃならない自己紹介だ。
こちらに敵意が無いのも分かって貰えるし……
「俺は、レウラント・リフィンスター。長いから、ルランで良いよ。で、こっちの美人がグラーシュ、それと、ごっついおっさんが、アルディで、黒い美人がエレナ。」
3人とも俺の紹介に合わせて会釈をしてくれた。
ナイス!
「で、今回の訪問の目的なんだけど、最初から伝えている通り、同行してくれたコウゾウさんの息子のイチオ君の安否確認。イチオ君は?」
「はい。私です。」
「はい、ありがとう。コウゾウさん、ここまで自制してくださり、ありがとうございます。後は存分に息子さんと……」
「いえ……よかった。本当に、無事で……よかった。」
ここまで自制していたことに感服したわ。大人ってこういうことを言うのかもしれんな……
その意味じゃ俺もまだまだか。
「これで、俺たちの目的は達したので、グロッキーな君たちを前に申し訳ないけど、御暇します。」
「「え……?」」
「嘘です。訪問の目的は達成されたから、一区切りついた事には違いないけど、ここからがメインテーマの2つ目です。」
「は?」
「さて、まずは自己紹介して貰おうかな。」
「……」
「黙ってないで!!端から順に自己紹介っ!!!」
「「はいっ!」」
俺の一喝に、気持ち良い返事が返ってきた。
ウダウダと言う様からは反抗の意思が残っているように感じていたが、根底には、この世界が弱肉強食、強さが正義があることがよく分かる反応だった。
忙しくてなかなか更新できずすいません。気楽にお楽しみいただければ幸いです。




