第27話 見当違いが命取り
交渉決裂は分かったけど……
「マナポーションってあんなに無気になって、何本もがぶ飲みするもんなの?」
初めて見るマナポーションの飲用が予想外も過激な一気飲み大会なものだから、俺はコウゾウさんに質問してしまった。
「もしかすると、強化系の薬も飲んでいるかもしれません。」
おいおい、どうせもう一発やるんでしょ?もうネタバレしてるんだから……
「無駄な抵抗は止めて、大人しくしなさーい!」
「ふふ、次は、どうかな……」
まぁ……そうなりますよね、お薬ガンギマリのまま止めることなんてできないよね。
ダークエルフが構えると、先ほどよりも大きな白く光る球が姿を現した。
生き物以外だったら幾らでも吸収してやる!!ってか……
「そんなの発射したら、大変なことになるぞー!やめとけー!」
俺の親切心溢れる制止も空しく、返答の代わりに、まばゆい光を放ちながら球が飛んできた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
視界が完全に光に覆われるが、一度受けた技だ。
俺は冷静さを失わなかった。
「はいはい、吸収っと。」
速やかにゲートを展開して音も無く吸収した。
静寂の中、腰を抜かさずに直立の俺とは対称的に、ダークエルフは完全にグロッキー、一人だけが上体を起こしていた。
「何故だ……先ほどはお前も……」
「ごめん、お恥ずかしい話ですが、ビビッて腰が抜けただけなんだ。効いてたわけじゃないのよ。」
「な……」
言葉と同時に意識も切れたのか、ダークエルフは倒れてしまった。
「おい、待て、寝るな!」
俺は話をしに来たってのに……
トボトボと近づいて見ると、全員白目をむいて気を失っている。
薬回ってそうだから、叩き起こしても話にはならないだろうな……
「えーっと、当初の作戦を変更して、ダークエルフをアジトに搬入して手当てします。」
コウゾウさんは、俺の言葉に耳を傾けず倒れ込んでいるダークエルフのフードを退かして顔を見て回っていた。
「コウゾウさん?あの、作戦変更なんですけど……」
「イチオーッ!!」
「え……?」
「イチオ――――!!」
「居たの!?」
「ルランさん、イチオが……」
「コウゾウさん!落ち着いてください!ただのマナ切れですよ!!(知らんけど。)」
「へ?」
「コウゾウさんも見てたでしょ?私から攻撃は何もしてませんよ」
「そ……そうなんですか?」
「ここではなんですので、一旦アジトの中に入って手当をして、話を聞きましょうよ。」
「分かりました。」
ダークエルフの搬入を済ませ、丁寧に安置されていたダークエルフの遺体に手を合わせて回った。
「ひとまずこれで良さそうですね。あとは、ダークエルフの回復を待ちましょう。」
「そう……ですね」
「すいません、ポーションと毒消ししか持ってないんですよ。」
俺は、そもそもマナポーションなんて知らなかったし……
「いえ、良いんです。そんなことよりも、ルランさん、目が覚めた瞬間に暴れられても困りますし、捕縛しませんか?」
「コウゾウさん、不安なのは分かりますが、そんなことしませんし、させません!」
ってか、目が覚めても、強化剤とやらの反動で、自由に動けないんじゃないかな。
「わ、分かりました……すいません。イチオが生きていた訳ですし……私はそれで十分です。」
「ははは、そうですね……はぁ。」
俺は相槌ついでに溜息をついてしまった。
コウゾウさんとしては、そうなんでしょうけど……
ダークエルフ側は、仲間を半分殺されて、むしろここからが本番で、気合入りまくりのまま……
どうなることやら……




