第25話 作戦開始
「コウゾウさんは、グラーシュの護衛を受けつつ、ダークエルフに、直接ご自身で、ご子息のイチオ君の安否を確認してください。」
「はい。」
コウゾウさんは、俺の指示に素直に従ってくれた。
中にグラーシュがルーロック山のエルフを助けた実績を作りたいという雑念が含まれているのが、少々心苦しい。
それでもチャンスは有効活用せねば。
俺は支持を続けた。
「私とアルディとエレナは後方に控えます。何かあればすぐに前衛に出ます。」
「お願いします。」
「それと、今回の訪問の目的は、イチオ君の安否確認です。それ以上もそれ以外も無しです。」
「分かりました。」
「それじゃ、行きますか!」
やがてアジトが見えてきた。
この前の暗闇に乗じて弓矢で暗殺スタイルと打って変わって、ダークエルフは5人全員が堂々と姿を見せて、既に身構えていた。
こちらの接近に一切動かずに5人が一列に並んでいるさまは、何かしらの決意を示しているような……
それとも、怒りで冷静さを失っているのか……?
こちらも正々堂々と姿を見せて、“やあやあ、我こそは、ミーヴの住人、ルランなり!”……って名乗りたい気持ちになったが、そんな雰囲気では無かった。
むしろ、気合が入りすぎて一触即発の雰囲気……
「おーい!ちょっと、待ってー!ちょっと話を詩に来ただけだから!」
俺は、耐えきれずに、両手を上げて、大げさに振って見せて、声を掛けた。
しかし、全く反応が無い。聞く耳持たずか……
徐に、一人のダークエルフが俺達に手をかざした。
前に出されたダークエルフの手に力が集中しているように見えた。
「ちょ……攻撃してきそうだね。」
「ですね。」
動揺する俺とは対称的に、グラーシュは落ち着いている。
一瞬恥ずかしさが込み上げて来たが、今はそれどころじゃない。
前方のダークエルフに意識を向けたその瞬間、シューッっと音を立て何かが飛んできた。
ボゴッ……バーンッ!!
グラーシュの張ったフォグパレスにあたって爆散した。
「何が飛んできた……?爆弾……?」
「いえ、爆散道具の類ではありません……圧縮された空気の塊のようです。」
発射したダークエルフがニヤッと笑うと、残りの四人も手をかざした。
そして、一斉掃射が始まった。
しかし、次から次へとフォグパレスに当たって爆散消滅していく。
鳴り続ける爆発音のなか、グラーシュの日ごろの努力に感謝して、つい合掌してしまった。
一方のダークエルフはお構いなしだ。
一向にやめる気配が無い。
「グラーシュ、正面の5人で全員の筈だから、フォグパレスの強度を前方に集中して!」
「分かりました!」
グラーシュの返事と共に爆発音が小さくなった。
マシンガンのように飛んでくる圧縮空気の球も凄まじいが、凌ぎ切っているグラーシュのフォグパレスは異常だな。
もう、グラーシュも格闘家じゃなくて、魔法使いを自称した方が良いんじゃないか……
すると、攻撃が突然止んだ。




