第23話 二人の無関心と叱咤
「厄介なことに巻き込まれてしまったわね。まぁ、自分から巻き込まれに行った感じもするけど……」
「そうじゃな、思いの外、面倒な案件じゃ。」
「いっそ、ミーヴ城に戻って、侯爵にぶん投げたらどうかしら?“お前がやれ!”って。」
「ちょ、そんなことしたら身元保証書返せって言い出しそうですよ。」
お言葉に甘えてエルフの家で一泊となったが、寝るとすぐに、おじいさんと先生の夫婦漫才に付き合わされた。
他人事だからって、二人とも言いたい放題だ。
「言わせなければいいでしょ!余りまくってるエネルギーで、ちょっとお尻でも焙ってあげれば、良い子にあなたの言う事を聞くんじゃないかしら。」
「お尻を焙るって……」
「そうじゃ、そうじゃ、興奮するのう。あの高飛車な侯爵がキャッキャ言うんじゃないか。ぐふふ……」
「しないですから!焙るのも!興奮も!」
「そうなの?」
「何じゃ、詰まらん。おまえさんには遊び心が無いんか?」
はぁ。
なんなんだ……
この2人、楽しんでるだけじゃん。
「お二方が思っている以上に、大変っぽいんですから……なんか妙案下さいよ。」
「何を言っとるんじゃ!別にお前さん自身の問題でもないじゃろ!」
「そうよ。“別に大変ですね~”で済ませることもできたでしょうが!」
「――っ!」
言われてみれば……そうなんだよね。
俺が欲を出して、ルーロック山のエルフを助けた実績と、それに基づいて風属性の加護が欲しいって思ったから、勝手にエルフの問題に首を突っ込んでいるだけなんだよな。
この二人は、俺自身の問題には興味があるけど、それ以外は何というか興味が無いだけじゃなく、軽薄な気がする。
イチオのお父さんがイチオにだけ焦点を当ててる様な……
親心なのかな……
まぁ、いっか。
おじいさんや先生の言う通り、自分で勝手に飛び込んだことだから、自分で何とかするしかないか……
「そんなことより、グラーシュは呼ばんのか?」
「あーーーっ!!」
「はぁ、こんな肝心な時にも、欠かさずマヌケね。感心するわ。その筋金入りのマヌケには。」
「今ここでアルディに思念を送ればいいじゃろ。」
「え?そんなことできるんですか?」
「できるわよ。アルディでも、エレナでも、早くしなさい。」
“グラーシュを連れて、急いで俺んとこに全員集合!“
“”御意“”
「送りましたー!」
「よろしい。」
ついついやってしまった敬礼に、おじいさんはグッと胸を張って返事を返してくれた。
「朝には着くんじゃない?」
やれやれと小さく首を振って、先生が話を続けた。
「それだと助かるんですけど。でもイチオ父の準備は整うのかな。」
「何処までマヌケなんじゃ……」
「そうね……」
「え?」
「息子の安否確認に準備もへったくれもあるか!何をどう考えたって、お前さんの準備待ちじゃ!」
「ルーロック山へ貢献してくれるミーヴ侯爵が身元を保証するあなたへ、出来るだけ自制して、大人の対応をしているだけよ!」
あ……
「そう……ですね。」
こういうところは、独身で子供を授かった事の無い俺は、注意し続けないといけないところだな……
「分かったら、パッと起きて、支度しなさい!」
「はい!」
俺は再び敬礼をした。




