第20話 差入の背景その2
「協力する関係上、もう少々詳しくご説明頂けると助かるんですが・・・。」
「あ……すいません。」
「普段から良く集まっているエルフっていうのは?」
「イチオがミーヴの魔法学校に通っている時の仲間や、同窓生たちです。」
「もしかして、この集落だけではないって事ですか?」
「はい……全員の出身集落を把握していませんが、この集落だけではないことは確かです。」
「親御さんたちはアジトを知っていて、それぞれが特に連絡を取らずに差し入れをしていた……そんな感じですかね?」
「多分…私たちは、申し訳ないですけど、イチオの事しか…」
「それは、無理もない話ですので……」
「ダークエルフへの支援をしているなんて…それを集団でやっていたと知られたら…」
なるほどね……
だから、俺がアジトに居た時に来た差し入れを、その後に来たイチオのお母さん達は知らなかったのか。
「イチオ君のグループは普段どんなことしてたんですか?」
「そこまでは……ただ、ルーロック山を離れミーヴに降りて魔法学校に通ったことで、ルーロック山に対する愛着が非常に強くなったみたいで、ボランティア活動を中心に行っていたと聞いています。」
「間伐したりとか?」
「そうですね。緑魔法は切る、薙ぎ払うが得意ですから。赤魔法のような山火事の怖れもありませんし、黄魔法のような地質への影響もありませんし、青魔法のように水浸しになる事も有りませんから。」
あれ…?他の魔法を、しれっとディスってる…?
まぁ……いいか。
緑魔法のメリットとデメリットの話になると、本題から思いっきり脱線しそうだから止めておこう。
「その活動の中で、ルーロック山が穢されていると知ったって事ですか?」
「はい……ルーロック山は美しい風の山ですから。人間の中にもこのルーロック山へ愛情をもって関わりたいというものが居ます。」
「そういう人間ともコミュニケーションを取りながら、ボランティア活動の幅を広げていった……って感じですか?」
「みたいですね。10人位のエルフで、この巨大なルーロック山の全域をボランティア活動の対象にすることはとてもできませんから。」
「意識の高いお子さんだ…すね…」
「ぷぷっ。」
「すいません、こんな時に。ちょっと方言が出ちゃいました。」
「いいえ、構いません。」
あぶねぇっ!
“お子さんだったんですね”って言いそうになった。
無理やり言い換えたから、つい笑いを誘ってしまう形になった。
これは、ミーヴ侯爵のこと笑えないな……
“ミーヴ侯爵、この間は、変なことをツッコミ入れてしまってすいませんでした。”
「えーっと……何の話でしたっけ?」
「ボランティアの中で、人間と関わるようになったってところです。」
「そうでしたね。ご存じかと思いますがルーロックは南にミーヴ、東にダーゲンがあります。そのため、ここに来る人間はいずれかの土地からくるものがほとんどです。」
「関わりを持つようになったのも、ミーヴとダーゲン……ですか?」




