第18話 集落に寄り道
「大丈夫ですか?」
全く返事が無い。うつむく顔を覗き込むと目は泳いでいる。
大丈夫ではないよな・・・。
「このままここには居られませんよ。ちょっとだけ頑張ってください。とにかく村に帰りましょう。」
2人とも嗚咽が治まらず、嘔吐まで始めてしまって、まともに立てないでいる。
仕方ない。
2人とも俺への警戒心はさほど強くない様子だし、夜だし・・・
俺は、この状況を利用して、ラムーを召喚した。
リクライニングシートから、3人用座席に成形し直して、2人を乗せた。
リアカーを馬具に括り付けて、座席の先頭に俺が乗って・・・。
「さて、このまま道なりに進めばいいですか?」
「は・・・・はい。」
しばらく進むと集落に着いた。
「この集落ですか?」
「はい・・・。」
「ダークエルフはまだ5人います。何がどうであれ、まだ終わった事ではありません。もしよろしければ、ダークエルフの事を教えて頂きたいのですが・・・」
「・・・」
「分かりました・・・。」
「――!?あんた、何言ってんの!!」
「仕方ないよ・・・もう・・・。誰が残っているか分からないけど、これ以上は・・・。う・・・うう・・・。」
「ひとまず自宅まで送りますよ。どちらから?」
「私はもうすぐそこなので、ここで結構です。」
そう言うと、協力に消極的なエルフの女性は、ラムーから降りて去っていった。
「では・・・送りますね。」
「はい・・・。」
送った先は、集落の外れにある一軒家だった。
「ただいま・・・」
「おかえり、あれ?早かったな。ん?そっちの方は?」
旦那さんらしき人がお出迎えしてくれた。
「あ・・・あなた・・・。」
ガバッ。
「おいおい、どうした?」
女性は、すかさず抱き着いて泣き始めてしまった。
ちょ・・・先に俺の紹介をしてくれないと・・・すげぇバツが悪いんだけど。
「お取込み中すみません、私、こういう者でして・・・。」
「わ!侯爵の!失礼しました。こんなところで話していても・・・ちょっと、上がってください。」
そうこなくっちゃ。
「ありがとうございます。」
しっかし、本日2度目の身元保証書の提示も効果抜群、侯爵に感謝。
玄関から通された部屋で落ち着いて席に着いても女性は泣き崩れたままだったから、俺が分かる範囲の話をした。
「そうか・・・でも、それだけじゃ、うちのイチオがどうなったかは分からないな。」
イ・・・イチオ?
長男坊か?
しっかし、エルフの名前はどの名前も親近感が湧くというか・・・。
マイール山でも、聞くたびに馴染みのある名前を聞いたような・・・。
みんなそうなのかな。
じゃない!
そんなことは、今はどうでもいい!
「イチオさんは、息子さんですか?」
「はい、私たちの子です。」
「もしかして、ダークエルフ達に差し入れしていたのは、親御さんたちですか?」
「基本的にはそうだと思います。あとは、兄弟や親戚達ですかね。今回の闇落ちは、若い子ばかりですから。」




