第17話 職務質問開始
「こんばんはー!ちょっといいですかー?」
「わーっ!」
「あ・・・、驚かせてしまって、すいません。」
「こ、こんばんは・・・」
めちゃくちゃビックリしてるじゃん。
エルフが食料をダークエルフに提供するなんて見られたらマズいと思って、わざわざ夜中を選んで来たってのに、呼び止められるなんて・・・・って感じかな?
いけね!
営業じゃないから、名刺無いんだった!
「えーっと、怪しい者じゃないんですけど・・・道に迷ってしまって。」
「あの・・・どちら様でしょうか?旅の方か、冒険者の方なら、ギルドカードを見せて貰えますか?」
「ギルドカード!?持ってないんですよね・・・。」
「え?」
「あ・・・でも、身元保証書?なら持ってますよ。ほら。」
俺はおもむろにローブの内ポケットから出して見せた。
「えー!侯爵様の保証書だ!ちょっと見てよ!」
「嘘でしょ?・・・ホントだ!私、初めて見た。」
おぉぉ、ミーヴ侯爵、ありがとう、早速役に立ったよ。
「もう宜しいですかね。」
「あ、はい、ありがとうございました。」
ギルドカードは見せるだけでいい!安易に渡すな!ってなことを、工業ギルドのおじいちゃんが言ってたっけ。
すぐにポケットからゲートの中に仕舞った。
目深に被ったフードで確認はできないが、声の感じやリアクションから、この2人は女性のようだ。
しっかし、女性二人でリアカーに食料積んで夜中に移動って・・・鴨が葱を背負って来るようなもんだな。
リスクを負ってまでするって・・・なんか嫌な予感しかしないわ。
ただ、思い込みや想像で話をしてもいいこと無いし・・・本題に移るか。
「こんな夜中に、リアカーを引いてどちらへ?」
「ちょ・・・ちょっと、そこまで・・・」
「ダークエルフのアジトまで?」
「え?」
「冗談です。ただ、先ほども2人のエルフが引き渡していたのを見ましたので、そうかなって」
「そうなんですか・・・。私たちは村に戻るところです。」
ほう。
村から出てきたんじゃなくて?
「そしたら、お供してもよろしいでしょうか?」
「心強いです。是非お願いします。」
バレちゃ、しょうがない、引き返すか!ってところかな。
道中も貴重なヒアリング時間!
「あのー、たまたま、さっきダークエルフのアジトを見つけちゃったんですよね。」
「・・・」
「ダークエルフはエルフを襲うって聞いたことがあるので、今後はこんな夜中に女性二人で移動は控えた方が良いかと思いますよ。」
「はい・・・。」
「いや~、ダークエルフを見るの初めてだったので、物見遊山で、アジトの入口を見ていたんですけどね。」
「・・・」
「エルフが2人で食料を差し入れに来たんですよ。ダークエルフはエルフを殺す存在だって聞いていたので、そのやりとりにわが目を疑ってしまいました。」
「そうなんですね・・・。」
「不思議なことにダークエルフは、いつもありがとうございますって受け取ってたんですよね。」
「え?いつも?」
「ただね、そのあと5人のダークエルフがアジトに入っていったと思ったら、血相を変えて、2人が出てきたんですよ。」
「・・・」
「どうやら、食事の中に毒が仕込まれていたみたいで・・・中に居たダークエルフ5人が殺されてしまったようです。」
「―――!?」
突然、リアカーが力無く止まり、2人とも膝から崩れ落ちた。
もしかして・・・。




