第13話 アジトに到着
ラムーが見る先に偵察用の光の粒子を飛ばしてみた。
マジか、もう着いてますやん。
“ラムー、ナイス!”
ミーヴ侯爵からルーロック山までと言い、凄いな。
ゲート内に大量の空気がストックされている事からすると・・・前方の空気を吸い込みながら走っているのか。
後方にできる空気の渦・・・スリップストームは、尻尾で上手に撹拌して?
器用過ぎるわ!
“とにかく、ありがとうね。後は、お休みくださーい。ラムー、ハウス!”
俺の開いたゲートの中に、ラムーは静かに姿を消した。
さて、まずは光学迷彩!
自分の周りに偵察用の光の粒子を散布!
視界確保!
状況確認!
かなり訓練をしたつもりだったけど、少し酔うな。
ではでは、ここから5km、歩きますか。
・・・
・・・・・
誰も居ない静かな森の中を独りで黙って歩き続けた。
ただひたすらに寂しい。
俺は元来寂しがり屋なんだなって、痛感した。
もういっそ、ダークエルフの集落に普通にお邪魔しようかな。
晩飯とか御呼ばれされたいわ。
ち、違うか・・・。それは違うわ。
でも、マサオの話だとダークエルフは、殺意に従って成し遂げても、成し遂げずに改心しても、ダークエルフのままで、居心地悪くなって、最悪の場合は孤独死だったよな。
ん?
マサオを襲撃していたダークエルフは5人だったから、少なくとも5人は居る訳だから、孤独死しないで済むのか?
想像を巡らせながら歩くうちに、映像酔いにも慣れ、気が付けばアジトらしき洞穴に到着した。
洞穴周辺には、わずかに焚火の痕跡が残っているくらいだ。
当然か。
ここに居ますってアピールする必要が無いもんな。
周辺に外出しているダークエルフは居ない。
という事は全員、中にいるのか。
すると、背後から小さな物音が迫ってきた。
確認するとエルフが2人で、リアカーを引いて近付いて来るのが分かった。
俺は、脇に退いて様子を見ることにした。
俺は完璧な光学迷彩を張っている筈だから、見られることも無いし、気が付かれることも無いから、大丈夫だ。そう分かって居ても、ドキドキが止まらない。
ガラガラガラガラ
「おーい。居るかー。」
「御飯ですよ~。」
は?
どういうことだ?
俺の混乱が治まらぬうちに、中からダークエルフが2人出てきた。
「なんだよ!また持ってきたのかよ!」
「おまえ!なんてこと言うんだ!」
言われたエルフは苦笑いしていた。
「ありがとうございます。おい、おまえも、突っかかってばかりじゃなくて、お礼くらい言えんのか!」
「あ・・・ありがとう、ございます。」
「おまえなぁ、お礼は気持ちよく言えよ!聞いてて気分が悪いわ!」
「ははは、私たちの若い時にも、そういう時期がありましたから、気にしませんよ。要らぬおせっかいかと思いますけど、毒消しとポーションも持って来たんで良ければ使って下さい。」
「何から何まで、ありがとうございます。」
「じゃ、俺たちは戻るね。」
目の前で、当たり前のように、俺が居ない事とされて会話が飛び交い、荷物の受け渡しが終わった。
その状況を改めて体験することで、今にもバレるんじゃないかという不安も、全身にまで響いていた鼓動も収まっていった。
それと同時に、目の前で繰り広げられたエルフとダークエルフのやり取りに疑問が湧いた。
いったい、どういうことだ?
食料の差し入れ?
この最低限の会話からじゃ、訳が分からん。
ダークエルフはエルフから忌み嫌われる存在なんじゃないのか?
このまま荷物を受け取ったダークエルフの後を追って洞穴に突入するか・・・。
帰っていく2人のエルフを追うか・・・。




