第12話 アジト潜入段取り
「ブゥーツ!!」
「あ、ボルカールさん?」
「そう。」
グラーシュの足元を指さして、強めに言ってやっと我に返って理解してくれた。
「ここに来る道すがら、ボルカールんところによって、受け取ろうと思ったんだけど。」
「はい。」
「ダメでした。本人と最終調整しないと渡せないってさ。」
「はい。分かりました。侯爵の城に行く時についでに寄りましょう。」
グラーシュ専用のフルオーダーのブーツが、“ついで”とか。ボルカール、聞いたら泣いちゃうな。
まぁ、良いか。
どうせあのエロオヤジは、最終調整を~とか言いながら、股を覗き込むことしか考えて無さそうだし。
“アルディの弓もそのタイミングね。”
“御意。”
「それから、おカネなんだけど、グラーシュ、まだある?足りてる?」
「大丈夫です!」
そりゃ、森に籠って立木をシバいていれば、カネ使わないもんね。
「この集落のエルフが動き始めるまでは、訓練をしてくれていいんだけどさ・・・」
「はい。」
「俺はこれでここを離れるし、情報収集がすぐに済むとは思わないんだよ。だから、念のため、おカネに余裕が無いって少しでも思うなら・・・渡しておきたいんだよね。」
「分かりました。」
「とりあえず、200Gあればいいかな?」
「じゅ、十分です!」
俺が200Gを取り出すと、グラーシュは慌てて財布代わりの革袋の中に収めた。
「それから、俺が居ない間、ご飯を作ったら、1食分ってか、俺の分をエレナに渡して。」
“エレナ、吸収できるよね。俺が受け取るから。”
“分かりました・・・。”
なんか不服そうだけど、俺の為ならやってくれるみたいだ。
御陰で、潜入捜査中の食糧問題もクリアだ。
「それじゃあ、善は急げ・・・だったっけ。俺はいくね。」
「行ってらっしゃい。ルラン様。」
「次合う時には、エアーバッグをマスターしといてね。」
「了解です!」
マサオを乗せていたエラムに乗り換えてもいいんだけど、何があるか分からないし。
リクライニングシート仕様になっているラムーに引き続き跨るとするか。
「ラムー、引き続きよろしく~。」
俺はラムーの鼻を少し撫でて跨った。
「それじゃ、行ってきます。あとはよろしくね~。」
「はーい。」
グラーシュの明るい見送りに、気分良く出発できた。
・・・
出発直後、最初に、光の粒子で確認済みのアジトにダークエルフが今も居るか確認した。
アジトは変えられていなかった。
距離的には・・・明日の正午到着か。
場所をラムーに伝えて、5km手前で停止するようにお願いして、・・・寝た。
決して、眠いから寝たんじゃない。
夜のスニーキングミッションが連日続く可能性を考慮して、早めの睡眠をとってリズムを夜行性にしたかっただけだ。
ラムーも、その辺のことは理解できたのか、リクライニングシートを倒して寝始めた俺に、嫌悪感を向けることは無かった。
ってか、単に俺に対する服従心からかもしれない。
なんだか、初めて光学迷彩を実践投入する事にコーフンしてしまって、上手に寝付くことが出来ず、寝ては覚めを繰り返していると、ラムーが止まった。
あれ?
迷ったのかな?
リクライニングシートを起こして、見渡すとうっそうと茂る森の中に居た。
日も落ちて、辺りは真っ暗だし・・・
“迷っちゃった?”
そう思念を飛ばした直後に、ラムーから嫌悪感が返ってきた。
“え!?まさか、もう到着したの?”




