第11話 早速試運転
「それじゃ、マサオ、良い子にしてるんだぞ。」
「はいはい。」
「また来るね。いい子にしてるのよ。」
「はーい。」
最後まで俺とグラーシュに対する態度の違いが気になったけど、有益な情報を得れたからと納得してマサオの居宅を後にした。
「ルラン様、この後はどうされるんですか」
「とりあえず、さっきのグラーシュの修行所に行こうか。」
「はい。」
マサオに教えてもらった魔法を、早速試すために、もう一度森に戻った。
「さて、さっき教えてもらったエアーバッグなんだけどさ。」
「はい。」
「マナを空気に変えるんだよね?」
「そうです。」
「バッグの形は、大きくすれば布団になるってマサオが言ってたことから、自由自在って気がするんだけど。」
「そのようですね。」
「例えば・・・」
俺はグラーシュに俺のゲートの中で加工した親指ほどの小さな茶筒を見せた。
「何ですか?」
「10kg分の空気をこんな形の筒の中に押し留めるじゃない。で、敵に向けて空気を開放したらどうなる?」
「?」
「思いっきり空気の塊が当たって、“打撃”を加えれそうじゃない?」
「?」
ん-、グラーシュの反応が鈍いな。
でもまぁ、ウォーターニードルも昇華させたグラーシュだから、きっとうまいことやってくれるだろう。
仮に、上手いこと昇華できなくても、次の緑魔法の修得の糧になるだろう。
きっとなる!
というわけで・・・
「まずは、エアーバッグの熟練度を極限まで上げようか。その過程で、バッグの形をこの木筒くらいのサイズにしてみて。」
「はい。」
グラーシュは、“習うより慣れろ”タイプというか、“体で覚える”タイプだからな~。
もしかすると、俺のイメージしていること以上の何かをしてくれるかもしれない。
分からんけど。
でも、俺が潜入捜査をしている時間をエアーバッグの、ってか緑魔法の理解に当ててくれれば御の字。
「ルラン様は?」
「あ、俺は独りでダークエルフのアジト?に潜入捜査してみようと思うよ。」
「ひっ、独りで?」
「そう。この前試した光学迷彩があるから、きっと大丈夫だよ。」
「本当に大丈夫ですか?」
「多分ね。そんなことより、侯爵がさ、代金の引き渡しの時に言ってたんだけど、格闘技イベントをグラーシュのために開いてくれるって。」
「えーーーー!!ホントですか!?」
単独潜入する俺を心配してたんじゃなかったんかい。
気を逸らせようと思って言ってみたものの、あまりにも豪快に気が逸れてくれて、なんかちょっと悲しいわ・・・それでいいんだけどさ。
「本当だよ。詳しい話は教えてくれなかったけど、ルーロックの用事が済んだら、別に何の準備もしないで城に来いってさ。」
「わかりましたっ!」
テンション爆上がりで、今にも伐採・・・じゃない、訓練を始めてしまいそうな様子だ。
「それと、ブーツなんだけどさ・・・グラーシュ?」
テンション爆上がりの御様子で全く聞く耳持たずかい・・・そのピンヒールで平気なら別にいいけど、
森の中とか歩きにくくないかい?
ストークに乗って移動していることが多いからあまり気にしてないのか。
聞いてない!とか後で言われるの嫌だから、話しておきたいんだけど・・・。
「もしもーし、グラーシュ~、おーい。」
「は・・・はい。」
「ブーツ!」
「え?ブーツ?」




