第55話 漆黒の中の光
「何がどうなった?」
真っ暗な空間で、侯爵が、か細い声を上げた。
侯爵・・・そりゃ、こっちのセリフですよ。
右手で光の球を作り、辺りを照らした。
俺と侯爵だけが光に照らされて姿を現した。
「ルラン!無事か?」
無事か?・・・じゃないわ!
「説明して貰おうかな。事と次第によっては・・・覚悟はできているよな?」
柄にもなく、つい凄んでしまった。
「あぁ、分かっている。」
侯爵は、ぺたんと座り込んでしまった。
「まず・・・これは何だ?」
俺は、自分の首に下がっているタリスマンを指差した。
「それは、“服従の証”と呼ばれるタリスマンだ。」
「タリスマンだぁ?」
「タリスマンです。」
「それで?」
「首に下げられた者が、タリスマンの裏側に刻まれた者に絶対服従するように魔法が掛けられている、所謂“呪われたアイテム”・・・です。」
裏?
タリスマンをひっくり返してみると、“ファミリーライン:ミーヴ”の文字が打刻されていた。
魔法が掛けられたアイテムか。
でも、俺は魔法を掛けられた感覚ないんだよな~。
首から下げられた瞬間に、タリスマンの魔法が発動した事と、付き人の・・・エルンスト?の発言と侯爵の言動に便乗してみたけど。
余りに緊迫した状況だっただけに、俺みたいな大根役者の下手糞な演戯でも、バレなかったのだろう。
そんなことはさておき、なんで、魔法掛からなかったんだろう・・・。
威力弱め?
でも、付き人のエルンストが、俺を魔王と称していた。
俺を魔王だと思って使ったのなら、弱い道具な訳が無い・・・と思うんだが・・・。
ってか、俺が魔王?
この点も問い詰める必要があるな。
「このアイテムは?」
「レジェンド級・・・です。」
「レジェンド級か。」
もっと詳しく聞きたかったけど、聞き方が分からなかったから、曖昧にして押し切ってみたけど、レジェンドって何だ?
英語で、伝説とかって意味だったっけ?
こんなことならエロジジイ・・・じゃない、ボルカールに、アイテムについて色々聞いておくべきだった。
ボルカール?
いけね、グラーシュのブーツとアルディの弓の事、すっかり忘れてた。
ルーロック山に行く前に寄っておくか。
「レジェンドが効かないとなると、ルランはレジャンドか、それ・・・」
「ルランー?」
「ルラン様・・・」
「よろしい!」
ごめん、なんか、つい、悪ノリして、この状況を愉しんじゃった。
偉そうにしてる奴は、嫌いだから、俺もそうなりたくないんだよね~。
自分のことが好きじゃなくなるって、マジでしんどいから。
あとで、ルランに戻して貰おう。
その前に・・・
「これは、おまえのか?」
「いや、違う・・・ます。」
違うますって、侯爵、アホの子みたいじゃん・・・まぁ、いっか。
多分、これまで見てきた俺の戦い方と、今の状況から、極度の緊張と自らの威厳の狭間で、頭がバグってるのかもしれんから、多めに見るか。
「ほう。このタリスマンの裏側には、“ファミリーライン:ミーヴ”とあるが?」
「エルンスト・・・甥が、父から手に入れたか、宝物殿から持ってきたのだと・・・。」
へー、宝物殿とかあるんだ~。
見てみたいな~、知識と教養を高めるために・・・。
じゃない!
それは、また今度、侯爵にお願いするとして、今は侯爵の罪状認否だ!




