第53話 盤石な侯爵
「そうなるな。」
「じゃあ、それまでか・・・」
「お前、口に気を付けた方が良いぞ。」
ん?
「無礼千万。他の地を統べる侯爵の前で、絶対に、間違えても、同じ態度をとるなよ。」
あ・・・いけね。
「ごめんなさい。」
「まぁ、良い。私が・・・というかミーヴ家がこの地を追われることなど、断じて有り得ないからな。」
「まさか・・・選挙工作?」
「お前・・・絶対に喧嘩売ってるよな?今口の利き方に気を付けろって注意したばかりだろ!代金を貰ったからって調子に乗ってるだろ?」
「冗談ですよ、冗談。でも、どうして言い切れるんですか?」
「簡単なことだ。根拠は大きく分けて2つある。」
「ん?何と何ですか」
「1つ目は、この国の民は既に経済活動にばかり追われて日々を過ごし、政治は他人任せになっていて、自ら正しい知識を追求する事も無くなっている事が大きく関連している。」
「自ら自分の国を良くしようなんて考えても居ない。私がそう仕向けているわけではない。すべては長い年月をかけて、王都、政府、それに干渉する人々による企みの賜物といったところか。」
「国が政治で経済を整えようという発想も持たず人々が経済活動に集中するように仕向け、人々はそれに嵌まり込んで、仕組まれた経済活動地獄に必死だ。」
「転生したばかりのお前でもわかること言えば・・・国民の為と言って、重税を・・・特に契約税などというふざけた税金を課しているだろ?」
「国民のため、つまり自分たちの為と信じ込まされて、重税に耐えて必死に生きているのだ。人々は、自分たちが政治に参加してひっくり返せばいいだけのことなのに、そんなことも忘れてな。」
「一方で、政治の世界で、必死になって活動して生き残った者には、新たに政治の世界に飛び込んだ者には太刀打ちできない知識、スキル、人脈が蓄積されていくのだよ。」
「それが、自然とその家系と密接不可分に絡み合って、気が付けばその家にしか政治家が務まらない状況が出来上がる。」
「例えば、ミーヴ家の私を応援していた人脈は、私が倒れても私の子孫を立てて、応援していくだろう。」
「自由に立候補できるという制度になっていても、実際には自由に立候補なんてできない。立候補したところで、選挙活動はおろか、当選後の活動に耐えられるような体制が整っていないからな。」
「先の大戦直後は、この地を他の家系の者が領地として管理することもあったんだぞ。」
「なぜなら、ミーヴ家の所有地である昔のミーヴは消し飛ばされ、その消し飛んだ地の外側を新たにミーヴと定め、当時治めていた弱小貴族が、ミーヴの管理・統治を任された。」
「しかし、弱小貴族には荷が重すぎた。」
「結局、選挙を経て、新ミーヴもミーヴ家が領地として管理することになり、今に至った。」
「断言してやる。これは、ここから先も変わりはしない。」




