第51話 水代金の受領
“グラーシュは?元気にしてる?”
“はい。一応元気です。エルフ側の出方次第で、する事が無いからと、ひたすら練習しています。”
“宿泊先は?”
“マサオの住む家です。”
アルディとエレナに何かしらの異常があれば、こっちにフィードバックがあるはずだけど、特にそのシグナルも無いし。
まぁ、ひとまず安心といったところか。
“こっちは、これから代金の受け取りだよ。済み次第出発だけど、また連絡する。”
“分かりました。”
用意が出来たら呼ばれることになっているし、俺はする事が無いからって、努力しないぞーっ!
バフッ
真っ白なシーツが敷かれた大きなベッドにダイブして、目を瞑った。
・・・
コンコンッ!コンコンッ!
ドアをノックする音で目が覚めた。
不安を抱いて寝る馬車の中と違って、深く眠り込んでしまったようだ。
やっぱり安全の保障された部屋のベッドで寝ると違うわ。
しかし、大金が待っている!
「はーい!」
思いのほか大きな声が出てしまった。
足取りも軽く、勢い良くドアを開けると執事さんがいた。
「お待たせしました。用意が済みましたので、ご案内いたします。」
案内された先は前回とは異なり、侯爵の執務室だった。
侯爵は、部屋の奥のどでかい木製の机についている。
「へぇ~、普段はここで仕事してるんですか?」
「そうだ。」
部屋の中央にテーブルとソファーが配置されている。
ソファーの高さに合わないハイテーブルの上には、白い無地のテーブルクロスのが掛けられていた。
ん?
侯爵・・・服装はハイソなのに、このテーブルだけはインテリアに失敗してるんじゃないの?
まぁ、俺には関係のない事か。
ってか、これから200億Yが持ち込まれるのかな?
侯爵はテーブルに近づくなり、テーブルクロスを勢いよく剥いだ。
下から現れたのは、目が眩むほどの輝きを放つ巨大な金塊だった。
ハイテーブルだと思ったのは、ローテーブルで、上半分は金だった。
目を細めて凝視すると、金貨の表面にミーヴの紋章・・・。
「こ・・・これ全部金貨ですか?」
「そうだ、約束の200億Yだ!しかも、全て金貨で用意してやったぞ。2,000,000Gだ!さぁ受け取れ!」
マジかよ・・・。
「今日の引き渡しは半額で、残金は半年後だ。欲しければ取りに来い!」とかって言い出すかと思ったが、気前のいいこと。
ってか、このテーブルも良く潰れないな。
魔法で強化でもされているのか?
「すべて改めるか?」
テーブルを不思議に見ていたつもりが、侯爵に誤解されたようで、不敵な笑いを浮かべて問うてきた。
「いえ、侯爵を信じて、このまま頂きます。」
「ほう、素直に喜んでおこう。」
まぁ、急いで戻りたいってのもあるんだけどね。
「それでは頂戴します。」
そう言って、ローブを脱ぎ、金貨の山の端から徐々に掛けていった。
ローブの内側に作ったゲートに、どんどん金貨が吸収されていき、あっという間に代金の回収完了。
自分の内側に意識を向けて、吸収した金の重量を確認した。
侯爵の言う通り、200,000枚の金貨、2,000,000G!
「確かに、受け取りました。ご高配を賜り有難うございます。」
深々とお辞儀をして、頭を上げた時にはあまりの呆気無さに、侯爵はポカーンと口を開けていた。




