第48話 ティザー・ミーヴ
「お前が海坊主をやった場所から先は、急に深くなっている。」
「はい、だから、あそこまでしか行けませんでした。」
「あそこが淵で、先は、“クレーター”であり、ミーヴであった場所だ。」
「え?」
「ミーヴは、消し飛んだんだ。・・・いや、消し飛ばされた。」
脳裏に、先生が見せてくれた闇の粒子回収ミスの大爆発が過った。
まさか・・・おじいさんと先生の言っていた兄弟子たちの1人が、取り扱いを間違えて、ミーヴが消し飛んだのか?
「誰がやったんですか?」
「誰が、だと?個人でやれるわけないだろ!バカも休み休み言え!」
「え?」
「先の大戦だよ。」
「核ですか?」
「ん?核攻撃の事か?違うぞ。」
あれ?核攻撃じゃないのか。
「すいません、余計なことを言ってしまいました。大戦下で消し飛ばされたんですよね、どんな攻撃だったんですか?」
「魔法だ。」
「え?」
「巨大な超耐熱超硬金属の召喚魔法だ。」
「は?」
「超耐熱と超硬化を付与された金属の固まりが、肉眼ではおろか、望遠鏡でも認識の難しい、はるか上空で召喚されたら、どうなると思う?」
「自由落下して・・・超高速で地表に激突・・・」
最悪だな。
人工的な隕石落下か。
「流石は西の最果てを統べる悪魔の魔法というべきか・・・」
「ん?悪魔?それに、“先の大戦“って・・・。」
「くくくっ・・・・、はーっ、はっはっはー!」
突然の侯爵の高笑いに、ビクっと肩を動かしてしまった。
「何・・・です?」
「お前の望む通り、端的に分かり易く、要点を掻い摘んで“ミーヴが失われた”話を説明してやったぞ!これでミーヴが分かったか?」
く・・・。
まぁ、馬車に揺られて、城に戻るだけの退屈な道中だ。
このくらい侯爵と問答で一喜一憂させられた方が、楽しめるかもしれないな。
次は、侯爵からの質問の番か。
「では、侯爵、ご質問を。」
「ちょっと待てよ、何がいいかなぁ。」
・・・
「では、私から質問しますね。」
「何を言っている。私の番だ!」
「だって、質問してくれないじゃないですか?」
「だからと言ってパスと言っていないだろ!!」
この・・・。
今に始まった事じゃないか。
「了解です。そしたら、お好きなタイミングでどうぞ。」
「言われなくても、そうするわ!」
・・・
・・・・・
その後、侯爵からの質問も無く、時間だけが過ぎて行った。
日が落ちる頃になっても、一向に宿泊先に到着しない。
ダムへの行きがけの最後に泊まった宿泊先は、すでに通り過ぎている。
「もしかして・・・侯爵、夜通し走らせるつもりですか?」
「ふん。急いでいるんだろ?せめて1日くらいは詰めてやる。」
そりゃ、あんたは馬車の中で、でーんと座っていればいいだけだろうけどさ。
「大丈夫なんですか?」
「なめるなよ。」
いや、凄まれても・・・。
まぁ、なめるなって言われた以上、任せるしかないよな~。
では、お言葉に甘えて、お休みなさーい。




