第47話 新旧ミーヴ
「ミーヴが失われたって話を聞かせて下さい。」
ガタッ!
「あぁ?・・・貴様、正気か!!!」
ミーヴ侯爵は、突然立ち上がった。
込み上げた怒りを寸でのところでギリギリ抑えてくれているが、今にも激昂しそうな表情だ。
ミーヴ侯爵に“ミーヴが失われた話を聞く”・・・そりゃ、そうなりますよね。
でも、当事者の子孫?に聞くのが、間違いないわけだし。
その意味では絶好にして最大のチャンスなわけだし。
だけど、その前に、怒りを納めてもらうために、正直に言うしかないか・・・。
「すいません、私はこの世界に、転生したばかりで、その辺が分からないんです。」
「ん?転生者だと?」
「はい。」
「おまえも自称“転生者”なのか・・・」
ミーヴ侯爵は腰を下ろして、深呼吸した。
「ん?最近転生って、その成人のなりで、“空”でか?」
「そうですね。まぁ、“空”はイイんです。そこは、自分なりに消化してますので。」
「いや、そうじゃない。私が会った自称転生者も、たまに話に聞く転生者も、お前と随分違うぞ。」
「え?」
「まず第一に、転生者で“空”は聞いた事が無い。」
「え?」
「そもそも、この世界に転生者として生れ落ちたら、属性を得る。・・・当然だ。この世界に生を受けるのだから。」
ははは、俺は赤子の体に転生して生れ落ちたんじゃなくて、死体に入り込んで“死にぞこないスタート”だったからな。
何でそうなったかなんてわからないけど。
ただ、転生者が他に居るって言うなら、以前見かけた関帝廟も納得がいくな。
「そういうもんなんですね。」
俺にはそう答えるしかなかった。
「お前もお前なりに苦労してるんだな・・・まぁ良い。ミーヴが失われた話だったな。」
侯爵は、どうやら話す気になってくれたようだ。
「はい。」
「ただし、長くなるぞっ。」
「それは嫌です!」
ガタッ!
再び侯爵は立ち上がった。
「ルランっ!貴様、話を聞く気があるのか!」
「聞く気がありますよ。聞き流したくないから、聞き流さなくて済むように、短く、要点だけ、分かりやすく、お願いします。」
「お・・・おまえなぁ。」
「ちょっと、考えてみてくださいよ。馬車に揺られて、ずーっと同じ話題じゃ、生理現象として眠くなっちゃいますもん。」
「はぁ。そういうことは覚悟して聞く物だろ。」
ため息ついて、先ほど見せてくれた呆れ顔で座り直してくれた。
「阿呆を相手に、何から話せばいいのやら・・・。仕方ない。お前に分かりやすく、要点を掻い摘んで端的に、だったな・・・。」
「そんな感じです。お願いしまーす。」
「そうだな・・・海坊主をやった時、お前は沖に向かっていったよな?」
「はい。」




