第44話 ニュームスの意義
「いいか。ニュームスに書かれている事は、私のところに上がってくる報告と違う話ばかりだ。」
「そんなこと・・・え?」
「おい、我が一族の情報網をバカにするなよ!」
「いや、そっちを疑ってるわけじゃないですよ。」
いつになく語気の強い侯爵に圧倒されて、つい諸手を上げてしまった。
「今のニュームスは、読者を楽しませるための脚色、読者を自社に囲い込むための誘導ばかりだ。」
「今の?」
「そうだ。昔はそんなことも無かったようだがな。きちんと、真実を脚色せず伝えていたみたいだ。ま、私の生まれる前の話だから本当かどうか定かではないが。」
「ほとんどってのは?」
「今でも個人や少人数で作成しているニュームスの中には、私の情報網と遜色ない情報を掲載しているものがあるぞ。」
「そういうのも有るんですね。」
「しかし、そういうものは、特定の業界情報に特化しているものが多いし、そもそも、そんなものに巡り合うのは難しい。何故だか分かるか?」
「全然」
「ったく・・・想像してみろ!本当にあった出来事を、記者や発行元の主観が全く入れず、ありのまま書かれているニュームスなんてものは、読んでも退屈なだけなんだよ!それなのに買ってまで読むと思うか?」
「いや・・・」
「そうだろ。この国の住民は重い税金を払うために、ほとんどの者が馬車馬のごとく働き、毎日毎日、退屈な経済活動に追われてる。」
「ニュームスは、表向きは本当にあった出来事を伝えているが、様々な脚色を加えて、退屈しのぎの興奮をもたらしてくれるものになってしまっているんだ。」
「だから売れる?」
「そうだ。」
「ニュームスを作っている者もまた、重税の苦しみから、経済活動に囚われの身だからな。」
「以前、自称“転生者”が偉人の言葉を引用して・・・。たしか、退屈の反対は興奮で、人は退屈を凌ぐ為に興奮できるなら痛みでさえも厭わないもんだって言ってたが、ニュームスはまさにそれを実践していると言える。」
「ちょっと待った!」
「なんだ、いきなり大きな声を出すな!」
聞き捨てならないフレーズに、力が入ってしまったが、侯爵に一喝されてしまった。
「すいません、そのぉ、自称“転生者”?」
「なんだ、ルラン、転生者が気になるのか?」
「はい・・・」
「ほほう」
俺の素直な答えに、侯爵は不気味な笑みを浮かべた。
「ダメだ!話がブレる!今は黙って私の話を聞け!」
「んなっ!」
「返事はーっ?」
「はい。」
あっさり押し切られてしまった。
まぁ、いっか。
道中は長いから、次の質問は転生者に集中しよう。
「何処まで話したっけ・・・というか、そもそも、今のお前だって、ニュームスを利用できなくても何の不都合も無い筈だぞ。」
そりゃ、あんたはニュームス以外の情報網を持っているから言えるんだろ!
「それに、何やらお前は、たまに、運が良いと、お前の都合で色々なことが見えるんだろ?」
「う・・・」
まだ根に持ってるやん。
「冗談はさておき、ちょっと答えろ!」
「ちょ、何ですか?」




