第41話 侯爵と問答
執事の言う通り、侯爵は食堂に居た。
空腹のところに、ややこしい話を持って行くといいこと無いから、食事が済むまで食堂の外で待機した。
待っている時間を使って、思考を巡らせていたが、考えがまとまる前に侯爵の食事が終わってしまった。
物事、タイミングが重要。
こうなったら、一か八かで・・・
「侯爵、ちょっとよろしいですか?」
「何だ、改まって」
「マサオのお願いに、なんて応えたんですか?」
「マサオは、ルーロックの代表者でもなければ、代表者の親書を持っていたわけでもない。」
「まさか、それで一蹴したんですか?」
「そうだ。最低限、そのくらい体裁が整ったものでなければ対応しない」
「・・・」
「というか、体裁の整っていない物まですべて対応するほどの余裕はない。おまえ、ミーヴだけでもどれだけの住民が居るかわかってるのか?」
それもそうなんだけどさ・・・。
「わざわざ、私の食事が終わるのを待ってまで話に来るなんて・・・おまえ、何か知っているのか?」
「ん-、ついさっき知ったってところですかね。」
「マサオの話で知ったという事か?」
「いえ、色々、アレがアレでしてね。自分なりに調べて、マサオの言っている事は間違いなさそうだと。」
「ふん。アレがアレでな・・・。なるほど。それならば、お前がやればいい。お前は私ほどしがらみが無いからな。」
おいおい、無茶苦茶だな。
マサオは侯爵にお願いしたんだぞ。
まぁ、それも断られたわけだし、かといってなぁ。
俺もルーロック山の現状を知り、助けを求めるマサオと会ってしまった手前、見過ごすわけにもいかないような気もするし・・・。
「俺がってか、グラーシュ一行が勝手にやっても、怒らない?」
「お前が、私を怒らせないようにやれば、怒らない!」
はいはい。
「分かりました。」
「分かっていると思うが、明朝、城に向けて出発だからな。」
「了解です。それでは失礼します。」
・・・
依頼内容を無事に実現しても、このダムにおける俺たちの待遇は変わらず、今夜も野営となった。
明日の事を考えるから、侯爵たちに邪魔されない野営の方が、むしろ好都合なんだけどね。
夕飯の片付けと明日の準備を済ませて、テントにて今後の打ち合わせを始めた。
って言っても、もうほとんど決めちゃっているから、連絡会だけど。
「明日はどうしますか?」
「グラーシュは、マサオを集落に送って。」
「アルディとエレナはグラーシュの護衛」
「「御意」」
「え?ルラン様は?」
「俺は侯爵と城に戻ってきっちり代金を回収してから、すぐに合流するから。」
「それと、マサオはエラムに乗せてあげてね。」
多分だけど、ストークが怒ると思うから。
「俺は城まで侯爵の馬車にお邪魔していくよ。ルーロックに向けて出発するときには、ラムーを召喚して移動するから3日もかからないで合流できると思う。」
「分かりました。」
「では、各自明日の準備をして就寝ね。解散」




