第35話 侯爵の詰問
「まずは・・・どうしてお前はエルフの少年が襲われているとわかった?」
そこからか・・・
マジで根掘り葉掘り聞くつもりだな。
真面目に答えても、全部答えられるほど俺はこのスキルを理解していないし・・・。
ここから質問攻めに遭うんだろ・・・テキトーに嘘をついても、後々面倒になるだけなんだろうな。
「散歩していたら、なんか向こうの方で騒がしくて、・・・見えたから、ちょっと見ちゃったんですよ」
「見えたから見ちゃった?・・何だそれは?そんな答えが通ると思ってるのか?」
「ホント、たまたまですよ。侯爵は寝てたから分かんなかったと思うんですけどね。丁度ね、顔を向けた方向だったんでね。運よく見えたんですよ。」
「運よく見えるもんか!ダムの幅、分かってるのか?しかも、ダム自体の建設が最優先で、まだ周辺の整備も済んでいない事は、ここに来るまでにお前だって分かってるだろ。それに、これだけ暗くなってて・・・」
「いや、自分でも驚きました。たまには運がいいんだなって。で、魔が差して、誘惑に負けて、ついつい、出来心で、踏み外しちゃって・・・見ちゃったんですよ。」
「はぁ?」
「いや、ちょっとだけですよ。」
「何を言ってるんだ?」
「だからぁ、ちょっとだけですってば、イイじゃないですか。ちょっとだけなんだから。」
「お前・・・」
「いや、ホント、ちょっとだけなんでね。もーいーじゃないですかー。減るもんじゃないんだしー。」
「はぁ。」
侯爵は型を落してため息をついた。
「えーい、次だ!エルフの少年を襲っているのは、本当にダークエルフなのか?」
再び力のこもった声で、質問をぶつけられた。
正直言って、ダークエルフを知らない俺が、ダークエルフだと断定することができないんだよね。
見たまま言うか・・・。
「エルフの特徴って長い耳ですよね?」
「はっ。それだけではないがな。仮にそうだとして、どうしてダークエルフだと?」
「肌が・・・褐色だったですし、エルフの少年を追う手には弓やナイフが握られ、表情が強張ってましたから。殺す気なんじゃないかと・・・。」
「なるほどな。確かに、ダークエルフは、エルフ本来の透き通るような白い肌ではなく、褐色の肌で、エルフに殺意を向ける存在だ。」
おぉ、ダークエルフってのは、当たったっぽい。
正解を得て高揚した俺とは対照的に、目の間に立つ侯爵の表情は硬いままだった。
「状況から考えてダークエルフの可能性が高そうだが、ダークエルフは人間に対しても殺意を向けるぞ。グラーシュとアルディで大丈夫なのか?」
ん-、その点に関しては多分大丈夫だ。
アルディは重召喚してあるから多分負けないし、ダメなら再召喚すれば良い。
それに、グラーシュは、フェロモン漂う長身細身の巨にゅ・・・
じゃない!
あの見た目からは、とても想像が出来ないほど強いからな。
最近魔法もあわせて使えるようになったみたいだし、俺があげた指輪もある。
「目的が少年の保護だけですから、何とかなるでしょ。」




