第30話 怒りよ、静まり給え
おじいさんの説得と、梟のモフモフが奏功した。
先生は話ができるくらいまで怒りを納めてくれた。
とにもかくにも、状況確認だ。
何に怒っているか分からなければ、対応のしようがない。
怒りが落ち着いている今がチャンスだ!
「時間を負って状況を確認してもよろしいでしょうか?」
「いいわよ。」
「まず、私は、闇の粒子の球体を投げました。この点はOKですか?」
「別にいいわ。今まで教えた事の範囲だし、別に危険なことも無かったし・・・。」
「了解です。」
「☆あげないからね。」
「それも了解しました。」
こんなに怒っているのに、「闇の粒子の新しい使い方を修得しました。☆下さい!」なんて、言えるわけがない。
「次に、投げた対象は、敵・・・生き物でしたが、全てを丸のみにしたのではなく、一部を吸収するにとどめました。この点は?」
「別にいいわ。エレナのハルバードで切った場合と同じでしょ。切り口が違うだけで・・・。」
「了解です。」
「そして、吸収した肉塊を放置しました。この点ですよね?」
「そうよ!あんたバカじゃないの!いきなり生肉が来て、そのまま放置されていたのよ!下処理されて丁寧に包装された食用肉の贈答品ならいざ知らず、血の滴る生肉を剥き身で唐突に届けるヤツ、居る?居ねーよなぁ?ホント、頭悪いわ!サイテーよ!」
「はい・・・私の落ち度です。生肉を放置してしまい、大変申し訳ございませんでした。」
深々と頭を下げた。
まぁ、言われてみれば、まったくその通りだ。
俺の自室にいきなり血の滴る生肉の山が届いて放置されたら、キレるだろうからな。
今までは吸収後の使用目的があって、必要な対象を吸収していたから、吸収後に放置することも無かった。
生き物を吸収するなって言われてたから、そもそも生き物に向けて吸収をする事も無かったし・・・。
でも、ある意味、先生は俺を認めてくれたわけだ。
生き物に向けての闇の粒子の行使を・・・。
あ、いや、自分勝手な判断で、また怒られても嫌だから、次に先生と会う時までに自分のしたいことを明確にして、打合せしよう。
「っていうか・・・そんなに気持ち悪くて、嫌だったら、勝手に処理してしまえば良かったんじゃないかのう・・・。説教ならいつでもできる訳だし。」
―――っ!!
戦慄が走った。
ヤバい・・・背筋が凍って動けない。
慌てて梟がおじいさんの肩から飛び立っていった。
「あ・・・待って・・・」
おじいさんは情けない声を上げて、追いすがる・・・。
ビターンッ!
次の瞬間、生々しい音が響き渡った。
おじいさんの後頭部を、先生が力任せに生肉で引っ叩いた音だった。
その勢いで倒れ込み、四つん這いになってしまうおじいさん。
そこを、先生が生肉で、追い打ち。
生肉で、ビタンビタンと、叩きまくり・・・。
なんだ、この猟奇的なSMプレイは・・・。
「もうその辺で・・・」
俺が言い終える前に、先生がキッと睨んできた。
「あ・・・すいません。」
おじいさんには悪いけど、先生のガス抜きを任せよう。
吸収したら必ず処理!
吸収したままにしない!
強く・・・何度も・・・肝に銘じた。




