第23話 意識と心掛けの大切さ
「予想外のご提案でしたが、侯爵もお喜びの様子でした。ありがとうございました。」
後は就寝するだけってタイミングで、尋ねてきた執事にお礼を言われた。
「いえいえ、事前に申し出もしないで進めてしまって、すいませんでした。」
「滅相もございません。」
「それと、明日のストーク騎乗ですが、グラーシュと一緒に乗れば問題は無いと思いますが、念のためサポートよろしくお願いします。」
「分かりました。明日もよろしくお願いします。」
・・・
・・・・・
ストークは、予想通り侯爵とグラーシュの騎乗を、ご機嫌で受け容れ、終日ご機嫌だった。
侯爵も、たまに暴発するグラーシュの青魔法を、突然始まる“水芸”と思って、驚きとともに楽しんでいた。
やっぱり肩肘張らず、偉いとか偉くないとか置いといて、楽しいが一番だよね~。
まぁ、グラーシュはその度に顔が青くなっていた、青魔法だけに・・・なんてね。
移動は本日で3日になるが、市街地を抜けることが出来なかった。
これまで通り、まったり通行したのが大きな要因だと思う。
そして、本日の宿泊先も、侯爵家御用達のホテルだが、ここが最北端らしい。
明日は間違いなく入山だ。
明日以降は、侯爵はダムにある仮眠室を利用するようだが、他の騎馬隊は野営のようだ。
ホテル到着後、騎馬隊は速やかに野営資材の買い出しに出て行った。
出発時の荷物が少ないから、てっきり転移魔法を使って資材を持ち込むのかと思ってた。
転移魔法を目の当たりにできると楽しみにしていたのに残念だ。
シンプルに道中で手に入る資材ならば、必要なタイミングの直前で手に入れるのが合理的と考えてのことだったようだ。
気持ちを切り替えて、俺も明日の準備だ。
革袋を怪しまれて、チェックされたときに言い訳できるように、念のため、それっぽい印というか魔法陣を施すことにした。
20袋ってだけでも嫌になるのに、どれも両手を広げた位の大きさで、とにかく重いし、新品でゴワゴワしてて裏返すも骨が折れた。
このローテクな世界に居て、この程度の事で骨が折れるとか言ってちゃダメか。
こういう時に部下?家来?召使?とか欲しくなるけど、性に合わなそうなんだよな~。
俺が他人に偉そうにされるの嫌だから、他人に偉そうにするのも嫌で・・・。
でも、せっかく転生して、もう一度人生を送るチャンス貰えたし、いずれはこの嫌悪感も克服しようかな。
さて、全部の革袋の内側に魔法陣的なものを施すって決めて全てを裏返してみたものの、この世界の魔法陣ってどんな感じなんだろう。
もしかすると、ここまでの旅で目にしてきたのかもしれないけど・・・。
全然わからん。
アレよね。
事前に「これが魔法陣ですよ」って言われてないと、目に入ってても見逃してしまいがちだし。
それに、「これが魔法陣だよね。」って分かっていたとしても、いざそれっぽい物を描こうとすると、案外と描けないヤツだね。
だから、初めから「自分は魔法陣を利用するんだ」って意識を持っている事が大切なんだよな~。
意識や心掛けが有るのと無いのでは、雲泥の差があるってのは、こういうところで現れてしまう。
マジで、困ったもんだ。
こういう人間臭い所が自分に残っていると思うと、おじいさんと先生が依然言っていた“俺がもう人間じゃない”って発言が疑わしくなってくるわ。




