第13話 目の付け所が○○○○です
「納められた砂は、200ktと聞いた。それも日を跨いだものの、約1日で納品という話じゃないか。」
「はっきり言って規格外だ。その量の転移など聞いた事が無いわ。」
そうなのか・・・。
「1日で200ktもの砂の転移だぞ、信じられないくらいのマナを消費することになる。」
「アイテムを利用してマナを補いつつ、マナの消費を抑える装備を利用して、体への負担を顧みずに取り組んだとしても、1日で出来る芸当じゃない。」
「仮に無理やり実現したとしてもだ、どれだけ補助アイテムを使うことになるか・・・コスパが悪すぎるわ。」
「つまり、そもそも、ただの砂に、転移魔法を使う魔法使いなどいないということだ。余程のマヌケでもしないわ。」
「百歩譲って、ただの砂に転移魔法を使う魔法使いが居て、その魔法使いが、200ktの砂を転移させるマナを持ってたとしても・・・」
「そこまでの倉庫容量を、ただの砂に割り当てるなんて想像ができない。」
「いつの世も転移魔法が使える魔法使いは重宝される。」
「重宝される魔法使いの考えることは、当たり前だが、限られた倉庫のスペースを割の良い仕事のために用いようとするものだ。」
かー、なんぼでも入る空間を持っているから、そこまで気が回らなかった。
「にもかかわらず、グラーシュ一行は砂に転移魔法を使った。それも200ktというバカみたいな量だ。」
「余程のマヌケ魔法使いか、形容し難い化け物か・・・。無性に興味が沸いて代金の支払いを肩代わりした訳だ。」
ふふふ、読みが甘いな、侯爵。
俺はそのどちらかではなく、両方だ!
侯爵の予想を上回った謎の優越感が込み上げてきた。
「ただ、予想外だった。のこのこ現れたグラーシュ一行を鑑定したら、グラーシュは転移魔法を持っていない。残りの3人は“空”というじゃないか。」
「今まで“空”なんて判定結果は聞いた事も無い。それが3人も居る。」
「それに、砂が納品されたことは、事実だ。」
「ミーヴを任されて、色々なことを見聞きしてきて、かなり自信があったが、自分の認識を改める必要があると痛感したよ。」
「まずは自分の殻を壊すために、“空”なのに転移魔法を使う、その訳の分からない話に、1つ乗ってみることにした。
「ただそれだけの話だ。」
「断られたら、それまでの事。できなかったとしても、それまでの事。」
「そもそも新設ダムの稼働予定は、水の溜まり方が鈍いことを視野に入れて、竣工させたからな。」
「別に今回の依頼が失敗に終わっても、スケジュールに悪い影響は無い。」
「緊急用水とは言っているが、全く手を付けずに備えておくわけではない。」
「今の想定では、平時でも10%程度は産業用途で使用許可するから、それにより収益も上げられる。」
「仮に今回の依頼を達成して貰えたら、その収益化が早まるから、儲けものだ。」
要するに、始めから10年とか掛けて、水を溜める予定でダムを作ったって事か。
それが、俺のおかげですぐに水が溜まれば、緊急用の体制も整うし、10年待たずに今年から産業利用できたら、収益化が始まって、200億Yは回収できるって事か。
なるほど。
このミーヴ侯爵・・・頭キレるし、マヌケ相手に大胆な判断するね。




