第9話 言われたことをやってるだけなのに
伊達に会社員を10年以上やってたわけじゃないんだよ!
もうね、直感で分かるわ。
・・・
まぁ、聞くだけ聞くか・・・。
「どのようなことを思い付かれたのですか」
今の状況を考えると、聞くしかない流れだ。
「これから海に行くのだから、再現しなさい!」
はいー?
「ちょっと待ってください。突然起きた災厄を、これから再現ってことですか?」
「そう。とにかく、やるだけやってみなさい。ダメなら諦めるから。」
絶対に諦めないだろ。
そう言って諦めた上司に会った事が無いわ。
「では、仮に、試して上手く再現できて、海坊主出て来たら、侯爵の安全は?」
「大丈夫よ、そのために付き人が居るんじゃない。」
いや、だいじょばないです。
ってか、ダメです。
ってのと、あれだ、この侯爵、スイッチが入ると、人の話なんて聞かず、自分の思い付いた“良い事”を試したくて仕方ないって暴走するタイプだ・・・。
「海に到着したら、最初にやりなさい!いいわね!」
「わかりました・・・。ただし、海坊主出てこなくても知りませんからね。」
「分かってる!くどい!」
ミーヴ侯爵・・・無茶苦茶だ。
まぁ、いっか。
侯爵の命令で、光の粒子を集めれるわけだから。
出来る限り、チャンスと思って利用するだけだ!
・・・
・・・・・
護衛で並走する騎馬小隊の行軍音が、威嚇のように辺りに響き、道中は常に、馬車の通行が最優先された。
それに気が付いて以降は、乗って居て、申し訳なくなって、とても景色を楽しむような気になれなかった。
こういうの、向いてないんだろうな~、俺。
海に着くのは昼頃になると想像していたが、2時間程度で到着した。
「さぁ、到着したわよ。早速、取り掛かりなさい!」
言われなくてもやるわ!
全員が武器を手に取ったのを確認してから・・・前回同様に、半径8kmを指定して・・・光の粒子回収開始!
突然周囲が闇に包まれた。
騒ぎ出す侯爵一行。
ちょっと加減してるから、完全なる暗って訳じゃないだし、事前に説明も済ませているんだから、ガタガタ騒ぐなよ。
それに、侯爵がやれって言うから、やってるんであって、文句は侯爵にお願いしますよ。
海坊主たちが現れるまで、ただ待っているのも、退屈だから、俺は本来の業務である水集めの為に海に入っていった。
これ以上、スキルの行使を見られるのも嫌だったから、海に手を入れて水中で回収することにした。
まずは、海水を取り込み、水とそれ以外の成分の分解を試みた。
何の問題も無く出来た。
ただ、このやり方だと微生物がそのまま黒の空間に残ってしまうか・・・。
吸収した先から蒸留した方がいいな。
200Mtの水の蒸留に使うエネルギーのストックあるんか?
流石に無理そうだけど・・・
いや、有るわ。
何なら、まだ余る。
余るってか、使おうとしているエネルギーの量の方が少ない。
ヤバいな。
先生からは、ストックしているエネルギーは程よく使って、使いきれって言われているのに。
暴発が怖いから使い切っておけって事だろうけど、こんなもん使いきれんぞ。
後は、200Mtの海水をどうやって確保するかだな・・・。
少しずつ回収してたら、文字通り日が暮れてしまう・・・、まぁ、もう周囲は真っ暗ですけど。
ん-、どうしようかな。
幸いにも、この海岸線は、沖に向かって20mも行くと急に深くなる構造だ。
「グラーシュ、アルディ、エレナは砂浜で待機、海に入らないように!」
「はい!」
返事を聞いて、ひとまず沖に向かって海底の淵まで、海の中を歩いて行った。
いきなり200Mtを取り込むと、それを埋めようと水が集まって・・・災害が起きるよな~。
・・・
そうだ!




