第7話 本題かどうかは人による
「なんか、大変なことになったわね。」
「大丈夫じゃろ。」
頬に手を当てて心配そうな先生とは対照的に、おじいさんは楽観的だ。
楽観的と言えば、グラーシュだ。
「なんでグラーシュはあんなに簡単に仕事を受けたのかが分からなくて・・・」
「レーゼン侯爵と同格のミーヴ侯爵だからじゃないかしら?」
「じゃろうな。」
あ、そういうこと?
まだメイド気質が抜け切れてないのか・・・。
ここに来て、便宜的にグラーシュを筆頭とした“グラーシュ一行”のウィークポイントが鮮明になってしまったってことでもあるな。
でも、無理に俺がグラーシュの考え方を修正するのは嫌だからなぁ。
グラーシュが自分で気付いて、自律してくれるのを待つ。
それか、俺がグラーシュと対等な“冒険者”の立場に立つか・・・。
ん-、今俺の持っている情報が少なくて、いい案が思い付かない!
懸案事項で保留としておこう。
「で、本日の本題、宜しいですか?」
「うむ。【白き理】☆14じゃ!」
「同じく、【黒き理】☆14よ!」
「あ・・・」
「ほれ、本題は?」
「勿体ぶらずに始めなさいよ!」
「いや、それが本題だったんですよ。そして、結論も出たんですよ。」
・・・
「つまらん。」
「ホント、つまらない男!しかも、ドスケベ!」
つまらなくしたのは、御二方でしょうが!
それに、ドスケベは余計だ!
使用条件に、“グラーシュに事前アナウンス”を加えたんだから、ドスケベじゃないでしょうよ!
なんか、ドスケベ、ドスケベ言われると、ドスケベってどういうことかやって見せてやろうか!って気になってくるわ。
やらんけど!
多分!
「で、ちょっと気になった事があって」
「どうしたんじゃ?」
「光学迷彩しながら、換闇透過で飛び込んだ時に、グラーシュから着地音が聞こえたようなことを言われて・・・。」
「そうね、でも、二度目は上手くいったじゃない。」
「それが上手く理解できなくて。音を吸収したって感じはしてないんですよね。」
「それね。分かりやすく言うと、私が着地時の衝撃エネルギーを吸収したのよ。ダメだったかしら?」
「ダメじゃないです。むしろ、ありがとうございました!」
そっか、着地で発生したエネルギーの一部が空気を振動させて音になるのか。
闇の粒子の回収で、膨大なエネルギーがストックされているけど、いまいちエネルギーってものが、ド文系の俺には何なのか分からないから困っちゃうな・・・。
こんな事ならもう少し化学や物理に興味を持つべきだった・・・。
あ、でも、学生時代に、この世界に転生するかどうかなんて分からなかった訳だし。
現世のエネルギーとこの世界のエネルギーが、全く同じとは限らない訳だし。
あぶない、あぶない、大っ嫌いな“結果論”に陥るところだった。
大切なのは、今直面している“エネルギー”に真摯に向き合うことだ。
先生のサポートを受けつつ1つずつ学びますか。
「先生、今後ともよろしくお願いします。」
「急に改まって、何よ、気持ち悪い!私はドスケベの協力はしないから!」
くっ・・・。
ドスケベせんわ!
多分!




