第6話 打ち合わせのクロージング
「お受けいただきありがとうございます。早速ですが、どのように取り組むかご説明頂けますか?」
「はい。」
執事の質問を受けて、気持ちの良い返事をしたグラーシュが、笑顔を見せてくれた。
俺かい!
「そうですね・・・。あくまで現時点の構想でよろしいでしょうか?」
「もちろんでございます。」
仕事の詳細を聞いてノータイムで語る訳だから、ざっくりで良いよな。
「今日はもう遅いので、明日、7時出発で海岸に向かいます。」
「海・・・ですか?」
「はい。」
海以外にそんなバカみたいな量の水がどこにあるんだよ!
馬鹿正直に薄いなんて集めていたら日が暮れる・・・もとい、何年掛かるのやら。
いつ来るともしれない大雨を待って、雨水で、200Mt水を集めるのは非現実的だ。
それに、こっちにだって都合や予定があるんだ。
格闘技イベントの商業ギルドやら、ボルカールが調整したブーツと特注弓の受け取り・・・。
って、これだけか・・・。
ミーヴ領の沢山の住民の生活の為となると、そっちの方が重大か・・・。
むむむ。
「かしこまりました・・・。そうしましたら、西の城門に近い客間をご用意いたしますので、今晩はそちらでお休みください。」
「分かりました。それと、衛兵に、1時間で退城しろと言われて入城しましたので・・・」
「その点は大丈夫です。侯爵のお客様だと思わずに、一般客と同様の対応をしてしまったのでしょう。そちらもすでに手配済みです。」
そういう事か。
それならそうと、早めに言ってよ。
「ありがとうございます。」
「それで、納品はどのようにお考えですか?」
「納品・・・それは明日の取組に合わせて、進捗次第です。」
「分かりました・・・。1点だけ確認宜しいですか?」
「はい。」
「明日の出発は7時・・・ですか?」
「何か気になる事でも?」
「いえ、侯爵が起きてくれるか・・・」
・・・
なんか、さっきまで隙無く対応していた執事に、一点のほころびが垣間見えた。
この執事も、苦労してるんだろうな~。
でも、いじわるじゃなくて、マジでどうなるか分からないから、どうせなら早めに取り掛かりたいんだよね。
というわけで・・・
「出発は朝7時です!」
「かしこまりました・・・。」
「それでは、私は明日の手配に取り掛かりますので、客間へのご案内はメイドが対応いたします。よろしくお願いします。」
そう言うと、執事は慌てた様子で退室していった。
頑張れ、執事!
メイドに連れられて、客間へ移動した。
到着するまで30分もかかった。
この城、まじで広すぎるんだよ!!
メイドに西の城門まで4頭を移しておくようにお願いして、用意された4人部屋で休んだ。




