第3話 代金受け取り
通されたのは、家具の無い空き部屋だった。
部屋の中央には、祭壇の様なテーブルがあり、その上に布に覆われたものがあった。
隠れているのは・・・ミカン箱くらいのサイズか。
「これが今回の報酬よ。」
ミーヴ侯爵が豪快に布を取り去った。
姿を現したのは、金貨だった。
「40億Yを全て、ミーヴ領金貨で用意したわ。400,000Gよ。受け取りなさい。」
「おぉぉぉ!!」
ついつい歓声をあげてしまった。
俺は、会社員になってからの経験で、偉そうにしている奴と、現場を知らない“偉い奴”が本当に嫌いになった。
だから、応接室にミーヴ侯爵が入ってきたとき、好きになれそうにないなって思った。
でも、本当にすごい事をする人まで嫌いって訳じゃない。
これだけの金貨をこの短期間に用意したんだから、偉そうにされても文句は言えないな。
もしかして、既に貯蓄されていた金貨なのかもしれない。
だとしても、これだけ蓄財しているのもすごい。
・・・
いけね。
感心している場合じゃない。
きちんと受け取らねば。
「グラーシュ様、私が管理でよろしいでしょうか。」
周りの目に配慮して、グラーシュに伝えた。
「えぇ。」
ナイス!
グラーシュも、空気を読んで、いつもと雰囲気を変えて返事をしてくれた。
「それでは、有難く頂戴いたします。」
積み上げられた金貨に近づき、一枚金貨を手に取った。
ミーヴ侯爵の胸元に輝くブローチの中央に装飾されている紋章と同じ模様が刻まれてた。
ミーヴ侯爵領金貨に間違いなさそうだ。
右手でローブを開け、腰に下げていた革袋をゆっくり取り出して、金貨を掴んで革袋に入れていった。
「ほぅ・・・。」
ミーヴ侯爵が、感嘆を込めて、呟いたのが聞こえた。
・・・
・・・・・
全ての金貨が革袋の内側に展開させたゲートを通じて俺の中にストックされた。
約束通り、40億Y分の400,000Gだ。
「グラーシュ様、無事400,000G、受け取りました。」
「分かりました。」
すると、執事がグラーシュに近づき、書類を出した。
「こちらに受取のサインを。」
「はい。」
・・・
サインが済むと、執事が書類を持ってミーヴ侯爵の下へ行き、書類が確認された。
「代金の引き渡しは、以上だ。」
そう言うと、ミーヴ侯爵は付き人を連れて、さっさと部屋を出て行った。
よし、これで終わりだ。
無事に代金も受け取れたし、こんな堅っ苦しい空気、もう嫌だ。
早々に、おさらばしよう!
そう思って部屋の出口を見ると、執事が立っている。
「続いて、侯爵とのお食事の用意が整っていますので、ご案内いたします。」
え?
まだ続くの?
勘弁してよ~。
飯に付き合えとかさー。
こんなん、前世の営業所内接待と変わらんじゃん。
単身赴任の上司が、独りで夕飯喰うの嫌だからって夜の9時くらいに、こってりした飯に付き合わされるやつ・・・。
しかも割り勘で・・・。
安い給料なのに、なんでそんな外食に付き合わなきゃいけないんだよ。
俺は仕事を負えたらサクッと帰って、自宅で1人で落ち着いて飯を食いたいのに・・・。
はぁ、嫌なこと思い出しちゃったわ・・・
なんで、転生してまでやんなきゃいけないんだよー。




