第1話 ミーヴ城到着
出発準備を済ませて、女将にお礼を済ませて、出発した。
受領証に代金受け取り場所の住所が書かれているが、行ったこともない侯爵の城だ。
きっと大きな御城なんだろうってイメージを持ちつつ、道行く人に聞きながら向かった。
道中は、目を瞑って、散布した光の粒子で自分の身の回りの空間把握する訓練をしていた。
そんな俺を見てか、グラーシュもひたすらウォーターニードルの熟練度アップに取り組んでいた。
侯爵の城が見えてきたのは、日が落ちかけた頃だった。
しかし、見えたは良いものの、いっこうに近づいている気がしない。
距離があるのに、建物がはっきり見えるって、まさか相当デカいのか・・・。
城門まで500mのところまできた。
案の定、バカデカいお城だった。
「グラーシュ、ちょっといい?」
「何ですか?」
「レーゼン侯爵の城ってこれと同じくらい大きいの?」
「ん-、作りが違うので分かりませんけど、ここまで大きくなかったような・・・」
「そうなんだ。」
建造物は作りが違うと、受ける印象がかなり違うから無理もないね。
でも、同じ侯爵だから、同じくらいの広さだとすると、グラーシュがこの歳まで城内で不自由なく過ごせたってのも分かるような気がする。
そして、この城の一角に40億Yがあるわけだ。
ワクワクして来たー!
ともあれ、まずは状況確認。
偵察用の光の粒子でお城の周囲を把握してみた。
石づくりの城壁で囲われた敷地は・・・500m四方はあるな。
高さ30mくらいの城壁の上から顔を出している幾つもの建物・・・
城壁の周りは幅50mほどのお堀が囲み、その周囲には一切建物が無く、視界を遮るような森も無い平地だ
ただただ圧倒的な存在感を放っている。
リーチ伯爵の邸宅も敷地面積を含めれば、かなり広い印象を受けたが、全く比べ物にならないわ。
ってか、これだけ大きいなら、使っていない宿泊施設あるだろ。
リーチ伯爵のように、宿泊も取り計らってもらえると嬉しいんだけど・・・。
余計な期待をすると、空振りしたときに凹むから、さっさと用を済ませて、宿探しするって考えておこう。
城門に近づくと、城壁の窓からの複数の視線を感じた。
警戒もきちんとしてますな~。
門の両脇に守衛所があった。
初めてきた城で、どっちが正解かなんてわからない。
「グラーシュ、どちらの守衛所でもいいから、入城の手続きしてきて」
「はい。」
グラーシュは、迷った末に、左の守衛所に向かった。
少し経つと、グラーシュが駆けてきた。
「入城OKです。ただ、退出期限までに出よとのことでした。」
「退出期限って、あとどのくらい?」
「1時間です。」
待て待て、1時間で、初めて来たこのバカみたいにデカい城に入って、迷わず代金受け取り場所に行って来いってか。
どういう感覚なんだよ。
「それを過ぎると?」
「あ・・・すいません、その辺は何の説明もありませんでした。私からも尋ねてません。」
ということは、努力目標で、ちょっとくらい大目に見てくれるのかな?
それか、その後の処置が当たり前すぎて説明に値しないからか・・・。
ただでさえドキドキしてるってのに、時間にまで追われるのか。
勘弁してくれよ。




