第38話 伝家の宝刀“光学迷彩”
「一番は、【白き理】と光の粒子の可能性を信じて、考え抜いて行き着いたのが、たまたま光学迷彩だったってだけです。」
「先に、スケベがあったんじゃないと言いたいの?」
「はい!」
「はいっ!じゃないわよ!!今までどんだけ自分の煩悩の強さを証明して来たのよ!!あなた、歩く煩悩じゃない!!」
「くっ・・・。」
何も言えない。
「落ち着くのじゃ、ルランはルランなりに考えてのことじゃ。」
「鼻の下伸ばしながら、フォローしてんじゃないわよ!」
「え?」
おじいさんは慌てて鼻の下を手で隠した。
「バーカ!!」
「まぁ、待て!ちょっと聞け!」
「何よ。」
「真面目な話をすれば、過ぎた力を持った時に、その者の本性が出るもんじゃ。そうじゃろ?」
「そう・・・ね。」
「ルランに、今のところそんな傾向が無い事は、お前も分かっとるじゃろ!」
「・・・」
「だからぁ、まずは様子を見るんじゃ。」
ははは、“様子を見る“なんだ。
そこは“信じるんじゃ!“ではないのね・・・。
まぁ、いっか。
俺は会社の先輩から「お前はもっと自惚れた方がいい!」って言わていた。
だから、多分、光学迷彩できるようになっても、劇的に何かが変わることは無いと思うんだけどな~。
でも、男のロマン「透明人間」となると、性格変わるのかな。
悪戯心、出来心に支配されてしまう?
ちょっと想像ができないな。
遊び心や茶目っ気が強くなるくらいで、結局のところ落ち着くんじゃないだろうか。
35のおっさんよりも若かったら、また違うかもしれないけどさ。
まぁでもたまには若気の至りを思い出してみたい気もする。
色々と葛藤しているうちに、目が覚めてしまった。
まだ外は薄暗い。
ん-、散歩行くか。
“エレナ、散歩行くよ。用意して”
“分かりました。”
エレナとの思念のやり取りを済ませた。
起きていてくれて良かった。
隣の布団では、グラーシュは気持ちよさそうに寝ている。
昨日グラーシュには声を掛けてくれって言われたんだっけ・・・。
これを起こせってか?
悩むなぁ。
起こさずに出たら怒られる・・・。
逆に、起こしたら言われたからやったと言えるけど・・・。
こんなに気持ちよさそうに寝ているところを起こすのは気が引けるなぁ。
でもまぁ、グラーシュ本人に言われた事だし・・・起こすか。
「グラーシュ~、起きて~、散歩行くよ~。」
「ん・・・んん・・・」
「おーい。朝の散歩だぞー!」
「んー、んー!」
布団の中で両手を伸ばして目が覚めたようだ。
グラーシュは、ガバっと布団を撥ね退けて、体を起こした。
「おはようございます。」
「――!?ちょっ!!グラーシュ、出てる!!!」
慌てて布団を掴んで、グラーシュに掛けた。
「え・・・あ、すいません。」
ふぅっ、すっかり忘れていた。
夜だけじゃなかった。
エレナの召喚時のことをすっかり忘れていた。
あれだな。
グラーシュに起こされる方が、ラッキー・・・。
じゃない!
アクシデントが少なくていいかもしれないな。
ともあれ、俺がおかしくなった時に丁寧に介抱してくれるんだから、俺だって煩悩を抑えてできるだけ適切な対応を意識せねば・・・。
そんなことを考えながら、俺が用意をしていると、グラーシュは散歩の支度を済ませてくれた。
「昨日の疲れとか残ってる?」
「いえ、全然平気です。」
「良し!それじゃ、シュッパーツ!」




