第32話 旅館に連泊してやることと言えば
女将は連泊に快諾してくれた。
ありがたや、ありがたや。
まぁ、丁度空いていたみたいだから、むしろ女将の方が有難がっているかもしれない。
「さて、今日は魔法の訓練をします。準備が整い次第、砂浜に集合です。」
「はい。」
魔法の使えないってか、属性すら持たない俺が偉そうに魔法の訓練と言い出しても、気持ち良い返事で話に乗ってくれるグラーシュは、まじで有難い存在だな。
絶対に、全属性持ちの最強美人魔法使い(物理も得意)にするぞー!
・・・
・・・・・
女将に何があっても、俺らが戻るまで外に出ないでほしいとお願いをして、気持ちばかりのお金を払って砂浜へ移動した。
これで心置きなく、魔法やらスキルが試せそうだ。
といっても、さっきキャッキャウフフした砂浜では魔法の訓練したくなかったから、ちょっと離れた場所にてグラーシュを待った。
少し経つと、グラーシュが旅館から出てきた。
グラーシュは、さっきまでキャッキャウフフした場所に駆けて行って、キョロキョロしている。
可愛いな。
「こっちこっち!」
手を振って見せると、駆けてきた。
「ごめんね。ここでやろう。」
「はい。お待たせしてすみませんでした。」
「いいよ、いいよ。」
・・・
「さて、まず最初に周囲が暗くなりますが、気にしないでください。」
「はい。」
もう、グラーシュは俺のすることにいちいちツッコミを入れ無くなったな。
気楽でいいけど。
さてと。
まだ、朝の7時半だし、シーズンオフの砂浜だし、大丈夫だろうけど、念のため光の粒子を散布して確認するか。
・・・
よし!
半径10kmに今人は居ないことが確認できた。
・・・。
続いて半径8kmの光の粒子、吸収!
周囲が真っ暗になった。
「では、グラーシュ、フォグパレスを展開してください。サイズは、めいっぱい大きくして良いよ。」
「はい!」
・・・
「フォグパレス!!」
ブワッ!
え?
凄いデカくね?
1km四方くらいの出来ていません?
「グラーシュ・・・」
「はい。」
「すっ、凄いわ。何、この大きさ!」
「海沿いだからでしょうか。ウンディーネの補助が凄く利いている気がします。」
「そうか、水の精霊の補助があったね。でもそれも、グラーシュの実力だからOK」
“アルディ、素手でいいから、ちょっと来て!エレナは旅館の防衛ね!”
“”御意“”
「グラーシュ、1回フォグパレスを解いて、今度は無詠唱でやってみて。」
「はい」
グラーシュが返事をするとすぐにふっとフォグパレスが消えた。
ブワッ!
間髪入れずに、フォグパレスが再展開した。
今度は500m四方で展開した。
ん-、一気に小さくなったな。
こんなに違いがあるのか・・・。
それでも4人パーティの俺達には十分な大きさだ。
「これさ、凝縮する事って出来る?」
「凝縮?」
「そう、100m四方で作るんだけど、強度ってか濃度を上げるって出来る?」
「ちょっと試してみます。」
グラーシュは最初に今展開しているフォグパレスを凝縮しようとしてみたようだ。
縮んだが、100m四方までは小さくならなかった。
次に、一度フォグパレスを解いて、始めから100m四方のフォグパレスを展開してみた。
どちらも、濃く、強くなったがビックリするほどの変化は感じられなかった。
属性や魔法に無縁な俺だからそう感じたのか・・・。
しかし、グラーシュ本人が納得していない様子だった。
「ん-、グラーシュさん、これは宿題ですかね~。」
「頑張りまーす。」
「それでは、もう一度詠唱有りで、めいっぱい大きいの作ってくださーい。」
「はい。」
もう一度巨大フォグパレスが展開したころ、アルディが到着した。




