第31話 乗り物夢想
4人と4頭が乗って、心地よく風を切って水上を走り、転覆の不安も無いように幅も広くってすると・・・
光の粒子がバカみたいに必要になりそうだ。
船が今必要かと言われると、必要ではない。
という訳で、ボツ!
いや、保留。
最後は飛行機だけど・・・
これも同様の理由で、ボツ、もとい、保留かな。
この世界で飛行機は、理解されない気がする。
UFOとも表現されないだろう。
ただ、馬では移動できない場合に使えるという点で、船と同様に選択肢としては良い気がした。
が、これも光の粒子が足りないな。
考えて見れば、光の粒子のストック・・・全然増やしてない。
人目に付くような場所に出てからは、用心しているからなんだけど。
んー、どこかで纏めてガバっと増やそうかな。
「ルラン様―!」
振り返ると、グラーシュが駆けてきた。
「散歩に行くなら、声掛けて下さいよ」
「ごめんごめん。それと、昨日はありがとね。」
「いえいえ。気になさらず」
「夕ご飯美味しかった?」
「はい。残すのは、ルラン様の言う通り、勿体なかったので全て頂きました。とってもおいしかったです。」
あれ、全部食べたのか・・・。
「ははは、そりゃよかった。」
「朝の海・・・いいですよね~。」
おもむろにグラーシュは裸足になって海に入り始めた。
「冷たくて気持ちいいですよ!」
朝の澄んだ空気に、朝日とさわやかな笑顔・・・。
な・・・何、その誘い方・・・。
俺も裸足になって海に入り、時間も忘れて、ひっさしぶりにキャッキャウフフした。
その昔、“リア充爆発しろ!”って有ったけど、周りも気にせず楽しんでいた俺は、ある意味“爆発”してたような気がする。
旅館への帰り道、35のおっさんがはっちゃけた様を振り返って、恥ずかしさが込み上げてきた。
幸い、砂浜には誰も居なかったから良かったけど。
ともあれ、昨日の晩の不甲斐なさを忘れて楽しめたし、グラーシュが本当に気にしていなかったことが分かって、ほっとした。
旅館の朝食は軽めなものが出ると想像して、誘導されるまま食堂に入った。
しかし、昨晩、意識が朦朧とする中で見た光景が眼前に広がっていた。
「ここの旅館は、朝食も豪勢なんですね。」
「いえいえ、昨晩、ルラン様はお食事できなかったと聞きまして・・・」
マジ?
凄いやさしい女将じゃん。
ん・・・?
昨晩、女将は、食事を片付けに来たら全てキレイに食べられていた。
だけど、グラーシュからは俺は体調が悪くて食べていないと聞いた・・・。
なるほど。
俺は食事を抜いて腹ペコで、グラーシュは2人前をペロッと食べる食いしん坊・・・
普段通りの軽食を出したらマズいって配慮してくれたのか?
なんだかすいません。
「ルラン様、今日はミーヴ中央に行きますか?」
「ん-、ちょっと試したいことがあってね。もう1泊しようかなって。」
「はい。」
「ちなみに、ここの1泊の料金は、貸し切りでいくら?」
「16万Yに税で、19万2千Yです。」
「馬の世話も含めて貸し切りで20万Yか・・・悪くないね。」
「良し!もう1泊しよう」
「はい!」




