第26話 ミーヴの砂浜でまったり
「この受取証を後生大事に持っていても仕方ないから、速やかに代金の受け取りに行きましょう。」
「はい。」
埠頭の入口で退出の手続きを済ませて、ミーヴ中央へ向けて出発した。
ミーヴは海岸線に沿って発展しているから、いい機会だし、一度海岸線に出た。
秋の赤い夕日に海に砂浜・・・
こういうところを馬で走ってみたいって思ってたんだよね~。
夢中で走ってたら、エラムの息が上がっている事に気が付いた。
優しい性格のエラムは、アホな俺に無理して付き合っても怒らない。
「ごめん。調子乗り過ぎた。」
声を掛けながら首をなでなで、軽くぺんぺんした。
エラムの機嫌は良いようだ。
そうは言っても、これ以上走らせてもかわいそうだし・・・。
砂浜に降りて、ホゲーっとした。
「ルラン様?」
グラーシュを見ると、心配そうにこちらを見ていた。
「どうしたの?」
「え・・・今夜の宿泊先は?」
「あー、いけね。探して貰っていい?」
「はい。」
アルディを連れてグラーシュは探しに行った。
再び、まったり開始!
ゴロゴロしたり、砂に絵を描いたり、童心に帰って砂で遊んでいた。
あ・・・ここの砂を使えば良かったんじゃないの?・・・
ダメか。
塩まみれだ。
金属の研磨に使うにしても、鋳型に使うにしても、塩が障る。
でも俺が回収したら・・・
整地されているような砂浜に巨大な穴が開いちゃうか・・・。
あれはあれでよかったんだろうな~。
周囲に誰も居ないし、ちょっと周囲を把握してみるか・・・。
様子を見ながら1kmずつ半径を広げて、光の粒子を散開させてみた。
ん?海・・・ずいぶん深いな。
砂浜から海に向かって行くと20mくらい進んだところでいきなり深くなっている。
気になって、砂浜から20m地点をなぞるように調べたが、ずーっと同じ構造だ。
なるほど、これなら20mくらいの桟橋を作れば大きな船も着けれて、便利だ。
ミーヴが海岸線に沿って発展したのも分かる。
しかし、こんな都合良い構造あるもんかね・・・。
“ルラン様、宿泊先決めました。”
物思いにふけっていると、アルディから思念が飛んできた。
“はい、行きまーす。”
返事をして、思念の元にエレナと向かった。
・・・
着いたのは、海に面した旅館だった。
おいおい、無警戒もいい所じゃないか。
大金を受け取るための引換券を持ち歩いているって自覚が、グラーシュには無いんだろうな~。
まぁ、いいや。
「えーっと、今夜の部屋割りは?」
「部屋割りっていうか・・・」
またモジモジしてる。
なんか嫌な予感して来たぞ。
「どうしたの?」
「“貸し切り”です。」
「えーっ!」
俺の大声に気が付いたのか、女将が出てきた。
「この旅は、ご利用ありがとうございます。」
「貸し切りって、聞きましたけど・・・」
「はい、見ての通り小さな旅館ですから。6部屋しかありませんし、他のお客様も居ませんので。」
そう言う事か・・・。
他の客が居ないなら、むしろ安全だね。
「グラーシュ、貸し切り、ナイス!」
「はい。」
でも、館内は、清掃も行き届いているし、嫌な感じしないのに・・・なんで客が居ないんだろう。




