第23話 納品先に到着
朝からボルカールの店に寄った。
流石は職人の店、早くからやっていた。
「いらっしゃーい!」
女性店員の元気な挨拶に、嫌が追うにも気分が良くなってしまう。
「ボルカールさんは?」
「まだ準備中です。」
「そうですか。グラーシュのブーツとアルディの弓は1週間後の受け取りって話でしたけど、もうちょっと早くできます?」
「うーん。」
「ダメっぽい?」
「多分・・・。」
そうだよね。職人に納期前倒しにしてもらって、手を抜かれても嫌だし、機嫌を損ねてコミュニケーション取りにくくなるのも嫌だし。
「了解です。大丈夫、気にしないでください。本題はそれじゃないので。」
「そうですか。どんなご用件ですか?」
「ちょっと教えて欲しい事があって。」
「分かる事なら何でも」
「ありがとうございます。商業ギルド“最西新風”と格闘技イベント“格闘神”についてなんですけど・・・。」
「なんか最近流行っているみたいですよ。毎月開催されていますし、タレント活動をしている人気格闘家も居ますから、若い子のファンも多いです。」
「そうなんだ~。」
「見に行かれるんですか?たしか、今月も開催されるはずですけど。」
「いや、グラーシュが出たくなってて・・・。」
「えー!?グラーシュさん、出たいんですか?」
「はい!」
「それで、商業ギルドの“最西新風”に行ってみようかと思うんですけど、場所、分かります?」
「ちょっとわからないですね。でも、ミーヴの中央の筈です。」
「わかった。とりあえず、中央に行ってみて聞いて回る事にするよ。」
「ごめんなさい。」
「気にしないで。それと、ボルカールさんに宜しく伝えてね。1週間後の受け取りを楽しみにしてるってね。」
「わかりましたー。またのお越しをお待ちしてまーす!」
・・・
・・・・・
採集した砂の納品先は、港に近い倉庫の立ち並ぶ埠頭だった。
入口は、ゴツイ金属製の門扉になっていて、手前に大きな守衛所があった。
「グラーシュ、あの守衛所で許可証とかもらってから入るんじゃないかな。」
「分かりました。ちょっと行ってみます。」
「俺もいくよ。」
・・・
「すいませーん。納品に来ました~。」
「はいはい、納品ですね。納品書見せて下さい。」
納品書?
「これでいいですか?」
グラーシュが慌てて採石場の責任者から受け取った書類を出して見せた。
「はいはい、これです。どうぞお入りください。1番倉庫と2番倉庫にて受け取りと聞いています。先に1番倉庫に行ってください。」
「はい。」
「それと、これが入庫許可証になりますのでね、えーっと、グラーシュさんがメインの許可証を、残りの3名がサブの許可証を首からぶら下げて下さいね。」
「はい。」
・・・
敷地内は、バカでかい倉庫が立ち並んでいる。
えーっと・・・どれが第1倉庫だ?
1つ1つの倉庫が大きすぎて、訳が分からん。
見渡してみると、大きな地図看板があった。
ちょっと待ってくれ。こんなデカい倉庫が、まるで小さく書かれているじゃん。
しかも、合計で50番倉庫まである・・・。
なんなんだこの倉庫は・・・。
肝心の1番倉庫と2番倉庫は・・・分かりずらい!
1番倉庫って言うぐらいだから端にあると思ったらそうでもなかった。
馬鹿の一つ覚えみたいに同じような見た目の倉庫を建ててくれてるし・・。
どんな人が居るか分からないから、光の粒子の散布は控えるとすると・・・。
これは迷いながら行くしかないか・・・。
エラムに乗ったまま敷地内を移動することが許されている事が不幸中の幸いだ。




