第22話 歩くと何かに当たる
普段からエラムやラムーに乗っているから、人の目線で市街地を散歩すると意外な発見がある。
というのも、ポスターなどは割と道行く歩行者向けに、張られているからだ。
馬に乗って移動するときは、目的地までの移動が優先するので、わざわざ歩行者用の高さに貼られているポスターを意識することは無い。
気にするのは、標識や看板の類だけだ。
グラーシュも、散歩中、辺りをキョロキョロとしていた。
歩行者の目線の高さには、様々なポスターが張られている。
上手に作り込まれたポスターは目が行きがちだけど、全部見ていたら散歩にならない。
割り切って歩くしかない。
散歩、散歩!
ふと気が付くと、すぐ後ろを歩いていたはずのグラーシュの足音が無かった。
振り返ると、1枚のポスターを食い入るように見ていた。
慌てて近づいて覗き込むと、格闘技イベントの告知のポスターだ。
なんか嫌な予感がしてきた。
勝手な思い込みは良くないから、ちゃんと確認することが大切!
「グラーシュさん、何か気になる事でもありましたか?」
「この格闘技イベント“格闘神”・・・凄い興味があります。」
えーっと、なになに~。
主催は、商業ギルド“最西新風”・・・
競技は、立ち技、寝技、ミックス・・・。
え?・・・男同士、女同士だけじゃなく、男女の試合まであるんだ。
マジで何でもありだな。
全ての格闘技ファンを取り込もうとしてるのかな・・・。
「開催は11月22日・・・一週間後か!?場所は・・・ミーブ中央スタジアム?」
スタジアムで格闘技イベント?
メチャクチャデカいイベントだな。
格闘術を使うグラーシュとしては、素通りできないのか・・・。
「見たいの?」
「いえ。」
ん?・・・まさか・・・。
「出たいの?」
「はい・・・。」
そっちかー。
一週間後って事は、新しいブーツの受け取り後か。
でも、ブーツ持込可ってことは無いよな。
「俺は全然知らないイベントだから何とも言えないけど、これはグラーシュが、例えば最西新風で説明を受けて申し込むと出れるやつ?」
「私も全く知りません。」
「そしたら、砂を納品した後、商業ギルド“最西新風”に顔を出してみようか?」
「はい!」
グラーシュは、格闘技イベントへの参加?に頭がいっぱいになったのか、その後は全くポスターに興味を持たなかった。
おかげで、歩くことと風景を楽しむことに集中して、気分良く歩くことができた。
こっちの世界も、朝はマイナスイオンが多いとかあるのだろうか。
むしろ、前世の自分の先入観のせいだろうな。
いずれにしても、早朝の散歩が楽しめて良かった。
宿に戻り、軽い朝食を頂いた。
出発準備を整ってロビーに行くと、既にアルディとエレナが待っていてくれた。
さて、今日は納品に行くぞー!
その前に、ちょっと寄り道しますけど。




