第19話 大切なこと
「お待たせしました。」
「はい」
「どうしたんですか?ルラン様」
「え?いや・・・」
「では、始めますね。」
「は、はい!」
・・・
何、この間・・・。
「ルラン様・・・」
「はい。」
「おっ・・・」
「お?」
「おカネが、私の預かっているおカネが少なくなってきてまして、ちょっと分けて貰えますか?」
・・・
あ・・・
そっち・・・。
「ご・・・ごめん。ド忘れしてた。」
「いえ、私の使い方が悪くて・・・すいません。」
そうか、それを気にしてたのか・・・。
グラーシュは、シーデリア銀行で受け取った50,000Gとか砂で40億Yとか上手く理解できていない様子だったから、自分の預かっているおカネ基準で物事を考えていたのだろう。
そこに、ボルカールの店で高額商品ばかりが目に入る中で、ブーツの調整をお願いしたから、出費ばかりに気を取られて、心のゆとりが無くなってしまったのかな。
「俺は、グラーシュの使い方が悪いとは思ってないから、あまり気にしないでいいよ。」
「はい・・・。」
「そんなことより、とりあえず、1,000Gでいいかな?」
「そ・・・そんなに?」
いや、むしろ「それだけ?」じゃない?
だって、俺がどんだけ持ってるか・・・。
それに、俺らチョー金持ちよ。
いや、そうとは限らないか。
この世界の貨幣価値をまだ把握し切れていないから、何とも言えないな。
何より、俺みたいなもんが、1週間程度で40億Yも稼げているんだからな。
用心に越したことは無い。
そう考えると、1,000Gは渡し過ぎか?
まぁ、いいや、一緒に旅をするグラーシュに嫌な思いをさせたくないし。
それに、まだ俺の保管しているおカネは、たんまりあるし、このあと、砂を納品すればビックリするようなおカネをゲットできる。
幸い、おカネ稼ぎのために【黒き理】を使っても先生には怒られないし・・・。
なんなら、喜ばれるし・・・。
「いいよ。それに、今まで通り、グラーシュの思うように使っていいからね。」
「はい!」
「ヤバくなったら、ヤバいって言うから、足りなくなったら気にせず言ってね。」
「はい。」
そう言うと、グラーシュはお金を入れている革袋を持ってきた。
ゲートを開けて、1,000Gを取り出し袋に詰めてあげた。
黄金に輝く袋の中身を見て、グラーシュは御満悦のようだ。
「ルラン様、ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
一件落着。
極度の興奮と緊張からくる心労が溢れ出し、睡魔が襲ってきた。
「ごめん、グラーシュ、お先にお休み~。」
「ル・・・・」
グラーシュが何か言っているようだったが、良く聞こえなかった。
そして、ベッドに寝っ転がると、すぐに意識を失うように寝てしまった。




