第18話 謎のダブル
「ボルカールさん、完成はいつ頃ですか?」
「1週間ほど時間を貰えば作れると思う。」
「代金は?」
「500,000Yに税込みで600,000Yだ!」
安い!・・・って思っちゃったのは、俺の金銭感覚が狂ってきている証拠かもしれない。
ただ、名匠が逸品を作ってくれると思えば、安い・・・ってことにしよう。
「その値段で買います。ただ、後学のために、ちょっと教えてください。」
「何だ?」
「一般的な弓の値段ってどのくらいなんですか?」
「そうだな・・・・多分良い物で200,000Yくらいじゃないか。」
「そうですか。」
まぁ、名匠ボルカールだからな。
それに、職人は、値引き交渉して臍曲げられると、厄介だから。
「それでは、出来上がったころに伺いますね。失礼します。」
ボルカールにアルディも一礼して店から出てきた。
店内では店員が手を振ってくれていた。
・・・
・・・・・
さて、今夜の宿泊先は・・・ビジネスホテル?
馬を預けて中に入るとグラーシュとエレナが待っていてくれた。
「ありがとうね。どんな感じ?」
「手配が遅かったので、ダブルとツインを一部屋ずつになりました。」
「そっか。」
ん?・・・あれ?
「ごめん、ダブルとツインって、どう違ったっけ?」
「ダブルが大きなベッドが1つで、ツインが2つのベッドです。」
泊まり慣れてないから・・・いっつも、わからなくなるんだよね~。
「で、部屋割りは?」
「ダブルにルラン様と私で、ツインにアルディとエレナです。」
は?・・・
ダブルに、グラーシュとエレナ。ツインに俺とアルディでしょ?
その方が、なんか妄想が広がる・・・。
じゃない!
グラーシュにも、何かしらの考えがあったのかもしれない。
「ちょっと、ごめん、なんでそういう部屋割りにしたのか、教えてくれると有難いんだけど、いい?」
「あのぉ、ちょっとここでは・・・」
いや、グラーシュ、そこでモジモジされると、俺の勝手な妄想による誤解が生じてしまうんですけど・・・。
それに、もうこの部屋割で行くつもりでいるよね?
「グラーシュ?」
「今夜は遅いから、もう部屋に移動しましょう。」
おいー。
話聞く気が無いんかい。
まぁ、いいか。
俺は今日もなんか疲れが抜けてないから、あっという間に寝れそうだし。
・・・
部屋に着いた。
なんだろう、ダブルベッドとはいうものの、小さいような気がする。
ここで一緒に寝たら・・・
ちょっと待て!
訳があって、こうなったんだ。
その訳をちゃんと把握して、対応しなければ・・・。
でも、グラーシュ、モジモジしてたな。
もしかすると・・・。
じゃない!
「ルラン様、ごめんなさい。この部屋にはバスタブありませんので・・・先にシャワーを済ませてきてください。」
は?
荷物を下して、落ち着いたところで、唐突にグラーシュから誘導された。
こ・・・これは・・・。
言われるがままに、シャワーに向かったが、コーフンしちゃって、アレがアレで・・・。
体を洗う手がおぼつか無い。
・・・
いつも通り洗ったはずだが、たどたどしくなってしまった。
多分きれいに洗えたと思う。
「もう出たんですか?」
「はい。」
グラーシュの問い掛けに、声が上ずったような気がした。
平常心、平常心。
「私も入ってきます。」
・・・
なんか、落ち着かない。
仕方ないから、ベッドの上で、正座して目をつぶって、精神統一・・・
落ち着け、俺・・・。
シャワーを浴びる音・・・。
胸の鼓動が、体中に響く・・・
時間が・・・長く感じる・・・。
ヤバい・・・。
歳のせいか、マジでドキドキに耐えられなくなってきたような気がする。
・・・




